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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 一輪と向き合うように一人と、一日と。「光輪花」
縁あって「光輪花」という生け花に出会い、今週、二度体験する機会を得た。
この過程、脚本作りにとても似ている。
まず、いくつかあるお花をじっくり眺めて、一輪を選ぶ。
次に、その一輪をじっと見つめて、対話する。
正面から、横から、いろんな角度から。
花だけでなく葉っぱや茎も。
じっくり見て、どこがこの花の持ち味だろう、と観察する。
つぎに、花器を選ぶ。
立派な焼き物の器でなくても良い。
ドレッシングのガラス瓶やペットボトル、水差しだって花器になる。
どんな器に生けると、この花が映えるだろうと思いをめぐらせ、ひとつを選ぶ。
花器を決めたら、花をどう生けようか、考える。
茎の長さはどうしよう。
葉っぱは間引いたほうがいいかもしれない。
茶色くなったところを取り除いたほうが、花が映えそう。
花と花器がいちばんしっくり来る形を考えて、必要ならハサミを入れる。
選んだのは、オレンジに赤い斑入りの花。
檜扇(ひおうぎ)という。
辞書で「檜扇」を引くと、見開きの隣のページに「美育」があった。
昭和44年版の同じ辞書に「食育」はなく、「美育」という言葉のほうが歴史が古いらしい。
美しいものを愛でて心を豊かにする「美育」の力を先生は信じている。
その言葉が、わたしの選んだ花の名前と辞書のご近所さん。
花に呼ばれたような気持ちにもなって、なんだかうれしい。

花器に生けたら、いろんな角度から見てみる。
正面はこっちと決めて、それに縛られることはない。
生けてみて、こっちから見たほうがいいなと思ったら、そこを正面にする。
心のまま。
自由。
「終わりましたか?」と先生が聞かれる。
これでよし、定まった、と思ったら、終わり。
終わり、というのは、生けきった、ということ。
花。花器。花の長さ。葉っぱの数。角度……。
たった一輪でも無限の生け方があって、何を選ぶかに「個性」が表れる。
そこが、脚本づくりととても似ている、と感じるところ。
花と向き合う心は、子育てにも通じるところも。
この子のいいところはどこだろう、とじっと見てみる。
そのいいところを光らせるには、どんな環境がいいだろうと考える。
一輪を光らせるように、一人を光らせたい、と思う。
そして、いくつもある選択肢からひとつを選び続けて、終わりにたどりつくのは、「人生」そのもの。
大事なのは「じっくり考えて自分で選ぶ」こと、「選んだ結果に満足する」こと。
一日一日に一輪のように向き合っていけたら……。
そんなことまで思いを馳せさせてくれる、奥深い生け花。
先生のお宅から持ち帰って、わが家の器に生け直した。
花器に選んだのは、きれいな色のワインボトル。

檜扇の隣は、スカシユリ。
スカシユリの葉っぱを大胆にむしって、花のまわり以外は丸裸にむいてしまい、先生に驚かれた。
それも個性、それもまたよし。
子どもにもぜひ体験させてあげたい、と思っていたら、ちょうど文京区で夏休みに子ども生け花講座が。
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費用は実費300円。
実費(お花代)にアシが出てしまうのではと心配になるほど良心的なお値段。
親子での参加もできるようなので、ぜひ。
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07月12日(金)
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