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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 「宝物はあなたの中にある」三国丘高校講演
母校の大阪府立三国丘高校のセミナー講演へ。わたしが通っていた頃にはなかったのだけど、何人かの講師から、この人の話を聞きたいという希望を出して受講するのだそう。
卒業が平成5年だから、18年前!しばらく見ない間に、校舎はすっかり様変わり。駅からの道も、初めて歩くような不思議な感じ。

正門の近くに担当の先生が待っていてくださり、すんなり校長室へ。それがなければ手がかりゼロ。名物教師の東先生がお待ちかねで、「きみのお父さんお母さんはよく知ってるんだよ」。わたしも保健を受け持っていただいていたんですが……。先生のご記憶には残っていない様子。
東先生もうちの両親も卒業生。卒業生が教師になって戻って来たり、親子で同窓だったりがけっこう多い。それがファミリー的な校風を作っているのかもしれない。
講演は視聴覚教室にて。わたしの時代にもこの校舎とこの教室はあって、留学の思い出を話した覚えがある。
入口で「こんにちは!」と爽やかに挨拶してくれる男子生徒、好感度高し。第一希望で来てくれた生徒さん多し。
講演のタイトルは「宝物は、あなたの中にある」。

「つなげる」をキーワードに、皆さんとの接点は、わたしもかつてこの高校で学んだこと、という導入から、奇しくも今日が放送初日の「ビターシュガー」の話題に。高校時代からの親友三人組が39歳の誕生日を迎えるところからドラマは始まる。高校生だったあの頃と大人になった今は地続きで、過去の自分が未来の自分を支えてくれるという話をした。
これまでの作品が生まれた裏話や、ネタの引き出しをふやすコツなどを話して、約一時間。質疑応答で予想以上に次々と質問が出て、今どきの子は物怖じしないんだなと感心。わたしはこの手のものに手を挙げたいけど挙げられない子だった。
質疑応答は究極のプレストだといつも思う。投げられた質問に答えるまでの間に脳内をかき回して口から飛び出した答えに「へーえ。こんなこと考えてたのか」と自分で驚く。
セミナーは1、2年生対象なのだけど、志願して最前列で聞いてくれた3年生の女の子が「受験勉強が追い込みで、ほんとはこんなとこに来てる場合じゃないのかも。でも勉強する気がわかない」と質問。「時間は作るもの。机に向かってる時間が勉強時間じゃない。勉強はやらされてると思うより、自分のためにやらせてもらってると思うべし」と答えているうちに熱くなって、脚本の勉強でも同じこと言いたいんでしょ、と心の声が突っ込んだ。
司会をされた先生が、父が最後に教えた高校での同僚で、一緒に『パコダテ人』を観に行ってくださったというご縁も。
ビターシュガーのハガキ持って来たので、良かったら取りに来てくださいと講演後に告げると、列ができ、一人にサインをしたら他の子もお願いしますとなり、「宝物はあなたの中にある。脚本家 今井雅子」と書く間に一人一人と話をした。
「楽しかったです」と感想を言ってくれる子。「宮崎あおいちゃんはどんな人?」などと好きな役者さんのことを聞く子。「勉強すべきか、夢を追うべきか」と相談する子。「どんな本を読むべきですか?」と聞いた男の子は、わたしが頭に思い浮かんだいくつかのタイトルを答えたところ、すべて読んでいて、驚いた。
3年生の女の子とはツイッターでも先に「出待ちして」「します」とやりとりしていて、教室の後ろで待ってくれていた。一緒に校長室へ行き、講演を聴いてくださった先生方やいつも今井雅子作品を同窓会で紹介してくださっている事務局の吉田さんたちと世間話をした。何期の誰々がどうした、というような話が延々と、そして和気あいあいと。直接知らない人なんだけど、遠い親戚の話を聞いているよう。高校というより故郷の村に里帰りしたような感じだった。
講演で「三国の人は三国の匂いがして、東京で出会っても、けっこうわかる」という話をしたら、先生方も3年生の女の子も「わかるわかる、匂いがする」と意見が一致した。
うん、この母校も、わたしの宝物だ。
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10月18日(火)
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