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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ おとめ湯事件〜母と娘、一時間の攻防。
保育園からわが家と反対方向へ自転車を５分ほど走らせたところに、「おとめ湯」という銭湯がある。隣にコインランドリー屋があり、「あかりちゃんがいってたせんたっきやさん」とたまは呼び、「あかりちゃんもおふろやさんにいってたね」と言い、「こんどいこうね」と銭湯に興味を示していた。
「こんど」がなぜ「今夜」になったのか。
昨日の高水三山登山の後、広いお風呂で体をほぐしたいという気分に親子三人なったのだが、あまりに疲れて徒歩二十分の銭湯まで歩ける自信がなく、「たまちゃんとママはじてんしゃでいけばいいじゃん」と言うたまをなだめて、「明日ね」と言ったのだった。
そして、今夜。たまはしっかり昨日の約束を覚えていて、「おとめゆ、いく」と言い出した。晩ご飯を全部食べたらとわたしが言った。それが、その後一時間も続く攻防戦になるとは予想しなかったのだが、ああ言えばこう言うの応酬が延々続き、「今夜はおとめ湯に行かない」が確定するまでにずいぶん時間がかかった。
百戦錬磨のプロデューサーや監督相手に舌戦を繰り広げてきたわたしに、あの手この手で食い下がった５歳児娘たま。その記録を書き留めておこう。
たま「おとめゆ、いく」
ママ「ごはん全部食べたらね」
手つかずの、ゴーヤと茄子の味噌汁。
そして、かぼちゃとしいたけ炒め。
たま「やさいやだ、きもちわるい」
ママ「かぼちゃとしいたけ、ひとつずつ食べなさい」
たま「やだ、ぐちゅぐちゅしている」
ママ「食べさせてあげる。あーん」
とかぼちゃをたまの口に入れる。
たま「おいしくないよ」
パパ「おいしいよ」
たま「ママ、りょうりへたくそ」
ママ「食べないんだったら、おとめ湯なしだよ」
たま「やだ、いく」
ママ「じゃあ食べなさい」
と次のかぼちゃを口に入れようとする。
たま「まだはいってる」
ママ「ごっくんて飲み込みなさい」
たま「やだ」
しばらく口の中にかぼちゃをためて、ごくん。
ママ「はい、次」
たま「きゅうけい」
と子供椅子を下りる。
そのまま戻る気配がない。
ママ「じゃあ今日はおとめ湯なしね」
と野菜と味噌汁を食べてしまうと、
たま「たべるよ！」
ママ「食べるの？」
野菜炒めは終了。
ゴーヤと茄子の味噌汁をついで、
ママ「味噌汁食べたら連れて行ってあげる」
たま「ゴーヤきらい」
ママ「ゴッキーズには、野菜食べなきゃ美人になれないって言ってるじゃない？」
たま「ゴッキーズはおはなしのなかだもん。ほんとのゴーヤはたべたくない」
ママ「じゃあおとめ湯なしだね」
たま「ママのゴーヤ、まずい」
ママ「ゴーヤはにがいものなの」
たま「ママのゴーヤ、へたくそ」
ママ「じいじが育てたゴーヤだよ」
たま「じゃあ、じいじがまずいゴーヤをそだてたってだけのはなしだよ」
ママ「ぎゃこぎゃこ言ってる間に食べなさい。もう８時だよ」
たま「やだ」
ママ「じゃあおとめ湯なしだね」
たま「なんでだよ！」
ママ「ごはん全部食べたらって約束でしょ」
たま「そんなやくそくしてない」
ママ「しました」
たま「ママいじわるしてる」
ママ「してないよ」
たま「ママはたまちゃんのこときらいなの？」
ママ「なんでそうなるの？」
隣室で聞いていたパパが
パパ「面白過ぎるな、この会話。ちびまるこちゃんみたいだ」
ママ「食べたらおとめ湯行く、食べなかったら行かない」
たま「おとめゆ、いく」
ママ「だから……」
押し問答しているうちに、８時半に。
ママ「今日はもう遅いし、明日にしよ」
たま「やだ、ぜーったい、ぜーったい、きょういくの」
ママ「だってごはん全部食べてないでしょ」
たま「じゃあ、たまちゃんひとりでいく」
ママ「そういう問題じゃないの」
たま「（泣き出して）もうやだ、こんないえ」
ママ「はあ？」
たま「こんな……××××ママ×××××……やだ」
ママ「ママが何？」
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09月25日(日)
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