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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ NHKよる☆ドラ「ビターシュガー」顔合わせ
10月18日(火)22時55分スタート、NHKよる☆ドラ「ビターシュガー」の出演者・スタッフ顔合わせへ。作品に関わる皆さんの顔を見て声を聞いて、いっそう楽しみが募る結団式のようなもの。何を着ていこうか、何を話そうか。大人になっても、こんなときめく日があることのありがたさ。
顔合わせに出席するのは、「てっぱん」以来。朝ドラほどではないけれど、やっぱり「こんなに大勢の人が!」と驚く人数が集まる。リハーサル室にコの字に組んだ長机の横棒に出演者、縦棒にプロデューサーとディレクターに挟まれた、コの中間地点に、わたし。コの空いた部分の先に椅子が5列ほど。撮影、音声、編集、広報など各部門のスタッフと、出演者のマネージャーさんがずらり。
まず、制作陣から挨拶。チーフプロデューサーの後藤高久さんは数日前、熱中症と思われる立ちくらみで、気づいたら自転車が転倒して血だらけになっていた事件をいつもの軽妙なトークで披露。1〜5話と最終話を演出する西谷真一さんは「水分補給をしっかりしましょう」と親分らしく呼びかけ、5〜9話を演出する土井祥平さんは、家族の微笑ましいエピソードを話された。
わたしも事前に言われていたので、話すことを用意して臨んだ。
「恋の、あの甘さを、もう一度味わいたい。でも、あの苦さは、もう二度と味わいたくない」
劇中に毎回登場する主人公市子のモノローグを引用して、この仕事が、もう二度と、ではなく、もう一度、といえる作品、チームとなりますようにと話した。
「しっかり演説してましたね」と後でからかわれたけど、手ぶらでしゃべると、とんでもないことになるし……。
でもほんと、人生は「もう一度、もう二度」の繰り返しだなあと、脚本を書いていて、つくづく思った。飲み会も、買い物や飲食するお店も、人間関係も、仕事も、もちろん恋も。「もう二度と」の失敗の苦さを薬にして、「もう一度」をどれだけ積み上げて、「人生、失敗したもん勝ち」にしていけるか……。
脚本の仕事でも、苦いこと、甘いこと、いろいろ味わってきたけれど、「ビターシュガー」は書いていて楽しくて、幸せだった。だから、「もう一度」といえる仕事になりそうな予感がしている。
大島真寿美さんの原作『虹色天気雨』と『ビターシュガー』を30分×10回に再構成したドラマ「ビターシュガー」では、市子、奈津、まりの39歳の誕生日から40歳の誕生日までを描いている。
わたしが挨拶の冒頭に「41歳、ビターシュガー世代です」と言ったのだけど、出演者やスタッフの自己紹介で年齢を名乗る人が続出。同世代なのでイタい、身につまされるという人。まだ30代前半だけど勉強になりますという人。「60代」と名乗るツワモノ男子も。
和やかに顔合わせが終わり、第1話の本読みの後、リハーサル。てきぱきと模様替えが行われ、たちまち、市子のマンションの間取りが作られた。玄関からリビングまでの距離や動線を確かめながら、実際に動いてみる。

本読みでまず音声という命が吹き込まれ、リハーサルでその命が三次元になって立ち上ってくる。市子(りょう)が、奈津(鈴木砂羽)が、まり(和久井映見)が、美月(荒川ちか)が、三宅ちゃん(豊原功補)が、旭(忍成修吾)が、辻房恵(井上和香)が、動いている! その瞬間に立ち会えて、わくわくした。みんなかわいい、愛おしい。「いいですね」と西谷さんとうなずきあった。
セットでの撮影を経て、編集され、音楽が加わり、どんどん具体的な形になっていく。そして、2か月と少し先には、テレビで放送される。待ち遠しくもあり、ドキドキでもあり……。子どもを生みだすときのような気持ちで、脚本からドラマが育つのを見守っている。
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08月10日(水)
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