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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ リレーおてて絵本とオリーブちゃん脚本
産休に入った元同僚と数年ぶりに会い、「案ずるより産むが易し」「産んだら未知の世界と寝不足が待っている」と先輩ヅラしてアドバイスする。会社を辞め、脚本家で一本立ちした矢先に晴天の霹靂でたまを授かったときは、喜びよりも戸惑いが勝ったけれど、蓋を開けてみれば、案ずるより産むが易し、だった。
わたしにとって、何より大きかったのは、ひとが言葉を習得する過程に立ち会えたこと。自分もこんな風に日本語と出会い、たわむれ、身につけていったのか、と母国語に出会い直す体験。1才になる前には数えるほどの単語しか口にしなかったというのに、オリンピック一回分の時間の間に、単語をもりもり吸収し、自在に組み合わせ、いつの間にか、ずいぶん込み入ったことも表現できるようになった。
少し前からおてて絵本を作らせていることを以前の日記にも書いたが、今日は、ふと思い立って、リレー形式でやってみることにした。「あるひ たまちゃんが あるいていると おほしさまが おちていました」と出だしをしゃべって「はい、どうぞ」とたまに渡すと、即座にルールを理解して、続きを作り、「はい、どうぞ」と返してきた。それを繰り返し、こんなお話ができた。マはわたし。タはたま。
マ)あるひ たまちゃんが あるいていると おほしさまが おちていました。
タ)たまちゃんは ほしを しあわせに したいと おもいました。たまちゃんは ほしを つれてかえることにしました。
マ)おほしさまは しあわせにんじんの かたちをしているので もう しあわせかもしれません。
タ)たまちゃんは ほいくえんに ほしを つれていきました。せんせいに みせると きれいねえと いわれました。
マ)きゅうしょくの じかんになって たまちゃんは こっそり スープに おほしさまを うかべました。そして きょうの しあわせにんじんは たまちゃんです といいました。
タ)たまちゃんは そのほしを たべました。
マ)ところが おほしさまが あいたたたと いいました。ほしは いきているので たべられません。
タ)たまちゃんは ほしを たべるのをやめて あそびました。
マ)おほしさまは しあわせでした。そらから おっこちたおかげで たまちゃんの おともだちと あそべたのです。
タ)たまちゃんは ほしを おそらに かえすことにしました。
マ)でも おほしさまは そらをとぶ ほうほうを わすれてしまっていました。
タ)たまちゃんは せなかに はねをつけて おほしさまを だっこして ほしの くにに つれていってあげました。
タイトルは「しあわせなおほしさま」としようか。
しばらくして、たまが「しょうどしまのオリーブがすきだから、いま、オリーブのドラマかいてるの?」と言い出した。どんなお話?と聞くと「かようびよる6じからやるの」と言う。内容よりまず枠を押さえるところが業界通っぽい。「あさ3じまでやるの」と言う。大作だ。
オリーブが出てくるドラマなの?と聞くと「オリーブちゃん。にんげん。15さい。しょうがくせい」と言う。15才の小学生とは! 本人は狙ったわけではないと思われるが。オリーブちゃんの悩みは?と聞くと「やっぱりオリーブのことでしょ」。そんなオリーブちゃんが「すくすくそだつ」お話らしい。それもやっぱりオリーブだから?
「ママもオリーブのドラマのきゃくほんかく?」と聞くので、いいよ、一緒に書こうと言うと「いまいまさことたまえはきゃくほんをやりますってちゃんといっとかないと、テレビにでないよ」。書く前にクレジットの心配をするプロ根性。
早速、脚本開発に入った。一緒にと言ったものの、たまがしゃべるのをわたしが打ち込む形の共同作業なので、おてて絵本の口述筆記と変わらない。以下、たまがしゃべったままに。
あるところに オリーブちゃんがいました。
オリーブちゃんは いなかのみちを とことこはしっていきました。
なんにちも はしっていきました。
あるひ オリーブちゃんママという オリーブの ママが きました。
オリーブちゃんは そのママの こどもに なることにしました。
はるが きました。
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05月24日(火)
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