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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 映画『武士の家計簿』と『翔太と猫のインサイトの夏休み』
松竹試写室にて12月4日公開『武士の家計簿』試写を観る。プレスシートは劇中に出てくる家計簿を模したような和綴じの古文書仕様。汚しや紙の色も計算されていて、芸が細かい。算盤をかたどったケースに納められていて、凝った作り。作品にかける意気込みが伝わってくるとともに、丁寧に作られた映画だという期待が高まる。
磯田道史氏の原作『武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新』は刊行されて間もない2003年春、友人から「最近読んでいちばん興奮した本」だと送られてきて読んだ。日々のお金の出入りの記録から当時の暮らしぶりが立ち上る面白さに目を見張ったが、それを映像化するという考えにはいたらなかった。7年の時を経て映画化を知り、あの新書の行間をどんな風に膨らませ、映画という物語に紡ぎ直したのか、興味をそそられた。
観終えての感想は、読書からの想像を超えたものを見せてもらったということ。ある時代を懸命に生きた一家が実にいとおしく描かれていて、自分のご先祖でもないのに、無性に誇らしい気持ちになる。この国を支えてきたのは、こういう人たちだったのだ、という思いが、彼らの先に生きている今を肯定させるのかもしれない。
いちばん大切なものを見極めること。
何かを守るために何かを捨てること。
自分の役割に誇りを持つこと。
豊かさとは持ち物の量ではないということ。
そういった人生訓のようなものが、台詞ではなく、登場人物の生き様で示される。家を守るために物を絶ったときの潔い表情。がらんとした家の中で背筋を伸ばす一家。いつしか、「物を使いきることと命を使いきることは似ている」という思いが湧いてくる。
ちょうど試写室へ向かう道すがら読み始めたのが『翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない』という中高生向けの哲学入門書だった。わたしは中学生の頃「生きるということは死ぬことに近づいていくことだ!」と突然怖くなり、人はなぜ生まれ、どこへ向かっていくのか悶々と考えるようになった。大人になった今よりもずっと生きることにも死ぬことにも臆病で、哲学めいた思考にとらわれていた。だんだん興味のあるものがふえて、そんなこと考えるヒマもなくなって、この頃には締切にも追われて、自分がいつか死ぬことすら忘れていたのだけど、その哲学入門書を開いて、久しぶりに「いつか自分が消えてしまう恐怖」と向き合い、「生きるとは何ぞや」の問いをふっかけられた。
そんな、いつもより自分の人生を見つめ直すモードでスクリーンに向かったものだから、今日の映画の内容が余計に響いたのかもしれない。
『武士の家計簿』。ある時代を生ききった一家を描ききった映画だった。
闇雲に削れ削れと叫ぶ仕分け人よりも、今の時代に必要なのは、堺雅人さんが演じた算用者・猪山直之のような人物なのだろう。政治を司る方々にもぜひ観ていただきたい作品。
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posted at 17:11:52
@kawagoe_walker 蛸之徹、行けたら感想聞かせてくださいね。わたしはかれこれ20年以上食べてないので今もお店があることに感激。梅田に二つあるようですがわたしが行ってたのは丸ビル地下のお店です。同じフロアにある喫茶店カンテグランテへ流れるのがお決まりのコースでした。
posted at 17:06:36
【たま語】赤ちゃん園を出てわたしのおなかに入り、生まれたたま。ママが気に入ったので赤ちゃん園には戻らないと言う。どこが気に入ったの?「あし、おなか、おかお…ニュースたまとか、パソコンデニーズとかじょうずだなあって思うところ」。ニュースたまとパソコンデニーズは子守話のレパートリー。
posted at 11:15:16
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