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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ たまちゃんとママの黄色い自転車、たま3歳8か月。
0歳児で保育園に入り、ならし保育が終わって、ああ8か月だなあと思ってから4年、オリンピックひとめぐり分の月日が駆け足で過ぎ、今日で娘のたまは4歳8か月。このペースで4年を刻んでいったら、あっと言う間に小学生になり、卒業し、高校生になり、大学生になり、社会に出てしまいそう。

この4年で親のほうは白髪が目立ち始めたり肩こりがきつくなったりだけど、子どものほうは目覚ましく成長。歩けなかったのが今は走り、ブランコを立ち漕ぎする。できなかったことができることに置き換えられていき、言葉がふえ、人として豊かになっていく。日々の積み重ねの生きた成果が目の前にある。

ベランダ農園の緑がすくすく育つのに目を細めるようなしみじみした幸せを味わうと同時に、植物と違って反抗する生物であるので、手こずったりやりこめられたり対策を講じたりと親も忙しい。そういう意味では、親としては、4年分の経験値が蓄積され、それなりに成長を遂げているのかもしれない。

この1か月のたまは、3歳児までの小型保育園での最高学年になった自覚が手伝って、ぐんとお姉さんになった。寝るとき以外はパンツで失敗しない日が続き、本人も自信をつけた様子。何でも自分でやるんだという意欲も見せ、お風呂上がりは一人で服を着て、布団まで敷いてくれる。保育園の先生が上手に乗せてくれているんだろうなあと思う。

この一か月でたまが夢中になったものを3つ挙げるなら、3位 kiriチーズ(こんなに食べて大丈夫というぐらい好き)、2位 おっちゃんごっこ(ネタの宝庫なので、くわしくは後日)、そして1位は自転車。「じてんしゃにのりたいよー」と去年の春あたりから言われ続けていたのだけど、なくても不自由しないし、手をつないで保育園へ行き帰りするのも楽しいし、親子乗り自転車の購入を見送っていた。

ふと、家に眠っている自転車に子ども椅子をつけてみてはと思い立ち、つけてみたのが、3月の終わりのこと。その日から、たまは自転車に夢中になり、自転車乗りたさに保育園へも喜んで行くようになった。自転車がそんなにうれしいのか、と子どもらしく喜びを爆発させる姿に驚きつつ微笑ましくなる。

それよりもふた月あまり前、子ども椅子を求めて自転車屋さんへ出向いたのだけど、あいにく在庫切れで引き返すことになった。行きは「椅子がついたら乗せて上げるね」と言われて自転車の横を大人しく歩いていたたまは帰りは歩く気力が尽きてしまい、やむなく大きな前のカゴに体育座りさせて帰ったのだが、これが実に楽しかったらしい。「ワンワンのとこにのったんだよ」とパパに報告する声が弾んでいた。

たしかに自転車のカゴに子犬を乗せている人は多い。それを見て「カゴ=ワンワンのとこ」と理解するようになったんだなと思っていた。それが違うとわかったのは、朝ドラ「ゲゲゲの女房」を見ているときのこと。オープニング映像でヒロイン夫妻が自転車を漕ぐ姿を見て、「ぼくとママのきいろいじてんしゃのときは、ワンワンがのっていたんだよね」とたま。そうか、あの映画の印象が、カゴ=ワンワンのとこと呼ばせたのか。自分が脚本を書いた映画が娘に吸収され、表現となって出て行く。脚本家冥利と母親冥利を同時に味わえるとは、何とも有り難いこと。

偶然だけど、わが家で眠っていた自転車の色は黄色。同僚だったいづみ嬢がロンドンへ引っ越すにあたっての送別会に乗ってきていたもの。オンボロだし粗大ゴミに出そうかなと言うのを聞いて譲り受け、表参道から一時間以上かけて文京区のわが家まで漕いで帰った。『ぼくとママの黄色い自転車』の原作「僕の行く道」にはなかった自転車を登場させようと思いついたとき、黄色がポンと思い浮かんだのは、好きな色であるのと同時に、この自転車のことが心の片隅にあったからかもしれない。

歩くことが好きなので、年に一度の確定申告に乗って行くぐらいだったけれど、子ども椅子がついて朝夕の送り迎えに買い物にと急に出番がふえた。埃と錆を拭くと、くすんだ黄色は鮮やかに。たまは「たまちゃんとママのきいろいじてんしゃ」と呼ぶ。

今日のtwitterより(下から上に時間が流れます)
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04月22日(木)
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