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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 金蘭千里中学校講演「宝物はあなたの中にある!」

大阪にある私立の金蘭千里中学校にて講演。『子ぎつねヘレン』も応援してくださった今井雅子ファンの方のご紹介というわけで、その方が持参されたヘレンちゃんを手に記念撮影。
2年生の皆さんに「宝物はあなたの中にある!」をテーマにお話。先生方の他に父兄の方も何名か。地元大阪出身で、今日は実家のある堺から泉北高速に乗って天下茶屋で堺筋線に乗り換えて来ました、と大阪弁で語り始めると、親近感を持ってもらえた様子。


講演の内容は2年前に大学生を前に話した内容(>>>2007年10月26日(金) 愛知工業大学で「つなげる」出前講義
)をアレンジ。前回は作品ごとに「アイデアをどう結びつけたか」を話したが、今回は事前に授業で『子ぎつねヘレン』を観てくれているとのことで、ヘレンを引き合いに出しながら、「原作から脚本、映像になるまで」を説明したり、脚本開発や撮影の裏話を披露したりした。最初に刷った脚本で役者さんを口説き、決まった役者さんに合わせて脚本を書き直すこと(これを「あて書き」と言う)、ロケハンに行ったら太一とヘレンの家出先に想定していたゲームセンターがなくて、代わりに貨車でどうかと提案されたことなどを話す。


脚本家にとって大事な「つなげる力」は、「引き出しを使いこなす力」と言える。その引き出しの中身は、日々のちょっとした心がけで充実させることができる。それは、好奇心と想像力を掛け合わせて、「おもしろい!」と感動すること。感動したことは記憶に刻まれる。外国語もそう。丸暗記よりも、そうか、なるほど、と感心しながら覚えたほうが身につく。「L'arc en ciel」はフランス語の「虹」で、分解するとarc(アーチ)とciel(空)になる。空にかかるアーチで虹かあとうなずいたら、もう忘れない、


好奇心と想像力のアンテナを張っておくと、おもしろいことや出会いがどんどんあるし、どんどんつながる。金蘭千里中学校は進学に熱心な学校らしいが、おもしろがって学んだことは、受験を乗り切るだけじゃなくて、一生ものの財産になってくれると思う。


最後は『ブレーン・ストーミング・ティーン』の中にある言葉「宝物はあなたの中にある!」で締めくくる。

質疑応答の口火を切ったのは校長先生。「自分の意図したメッセージがうまく観客に伝わらなかった場合、どう感じるか」という質問に「作品は受け取ってくれる人がいて完成する。いろんな見方があっていいし、感想から発見すること、学ぶことも多い」といったことを答えた。

続いての先生は「中学校時代はどんな生徒でしたか」「作品を書くための専門知識はどこから得ますか」。中学校時代はソフトボール部の万年補欠で、週末は試合応援ばかり。でも、クラブ活動は最後まで続けなさいという母の方針で、続けたことが根気強さを養ってくれた。文化祭では脚本を書いたり演出したりした。作品に必要な専門知識は、たとえば『子ぎつねヘレン』なら獣医監修の方がついて、用語などは助けてもらえるが、幅広く知識を身につけるためには新聞を読むのがいちばん、と答える。

生徒さんの質問トップバッターは「小心者で人前で話すのが苦手」だという男の子。でも、手を挙げて真っ先に質問する勇気はさすが。わたしが中学生の頃はみんなの前で声をあげるのが極端に苦手だったが、「活発な人を輪の外から眺めている気持ち」を知っていることは、わたしにとっては大事なこと。恥ずかしいと思うのは自分を否定されるのを怖れるからで、裏を返せば、それだけ自分が好きということ。その気持ちも大切にしてほしい。


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11月16日(月)
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