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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ SKIPシティ国際Dシネマ映画祭9日目 クロージング
12 時から昼食会の後、クロージングセレモニー。国内短編コンペティション部門に続いて国際長編部門の受賞作品発表。短編審査委員長の高嶋政伸さんのコメントには映画への愛がたっぷりこもっていて、味わい深い。受賞作のひとつ、『黒振り袖を着る日』への思い入れを語った際に「来月結婚することになりまして……紹介しちゃおっかな」と会場にいるフィアンセを紹介したのが何とも微笑ましかった。大賞受賞作『エレファント・マド』の監督HAMUさんは男性二人組さんで、そのうち一人は元気な男の子を連れて壇上へ。「外で子どもの相手してたらいきなり呼ばれて」とあわてふためきつつ、おとなしくしていないわが子を押さえてあたふたする姿が笑いを誘い、これまたいい感じ。

長編部門の表彰は5つの賞を5人の審査員が授ける形で進んだ。関係者が会場に駆けつけられない作品は、受賞者の喜びの声が会場に流れた。昨夜から今朝未明にかけてスタッフは電話をかけまくったとか。わたしがプレゼンターとなった脚本賞の『The Class(ザ・クラス)』の監督・脚本、エストニアのIlmar Raag(イルマール・ラーグ)さんには無事トロフィーを手渡すことができた。学校でのいじめを行き着くところまで描いた『ザ・クラス』は、観ていて苦しく辛い作品。わたしが脚本を書いていたら追いつめられる主人公に救いの手を差し伸べたくなっただろうけれど、この映画は絶望を突きつける。いじめを終わらせるために主人公が取った行動は最悪の結末を招き、せめて映画には希望を見せて欲しいという願いは裏切られる。けれど、現実はこんなもんじゃないというメッセージ性は強烈。作品の影響力の大きさゆえに、ぜひ賞を授けたいという声と、賞を授けることには慎重な声がせめぎあい、審査会議はかなり白熱した。結末に目を奪われると、衝撃ばかりが目立ってしまうけれど、作品は冒頭から一貫して「人間の尊厳とは」を問い続けている。その問いの重さが心の深いところまでずどんと投げ込まれて、時間が経ってもなかなか立ち去らない。強い意志を持った脚本のチカラに感服した。

長編部門の最優秀賞は『Arranged(幸せのアレンジ)』。学校の同僚として知り合ったユダヤ教徒とイスラム教徒の女教師が友情を育みつつ、お見合い結婚を進めていく。シンプルな物語なのに、ヒロイン二人の会話には終始ドキドキがあり、観ているうちに「二人とも幸せになってほしい」という思いが強くなる、そんな愛すべき作品。お膳立てされたお見合い結婚までもがステキなことに見えてくる。宗教の違いから来る摩擦や誤解を取り上げつつもチャーミングに描いた力量はかなりのもの。深刻に見せすぎないことで、彼女たちが実際に生活しているようなリアリティを出すことに成功したと思う。

監督賞を受賞したスペイン映画『Listening to Gabrielガブリエルが聴こえる』、審査員特別賞を受賞した『Lino リノ』『Echo 記憶の谺(こだま)』についても、賞を逃した他の7作品についても、語りだしたらきりがない。審査が縁でめぐりあえた12作品の感想は、日をあらためて紹介したい。

受賞を記念して『幸せのアレンジ』が上映される時間を使って、DVDにて短編を観せてもらう。審査員特別賞を受賞した『覗(のぞき)』(35分)、以前どこかで紹介記事を読んで興味を持っていた『大地を叩く女』(21分)、オープニングパーティで知り合い、水曜日に神楽坂で一緒に飲んだ百米映画社の塩崎祥平さんが監督した『おとうさんのたばこ』(17分)。短い作品でも作り手の個性は明快に現れる。短い作品だからこそ、とも言えるのかも。


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07月27日(日)
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