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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 串駒 天明(曙酒造)七夕宵宮の会
酒呑みではないけれど、大塚にある『串駒』は、名前を思い出すと、無性に飲みに行きたくなるお店。ここで飲んだお酒がことごとく楽しかったから、またあの楽しいお酒を、と思ってしまうのだが、ご近所仲間で行った初回以降は、「利き酒の会」目当てに足を運んでいる。お酒の作り手を招いてお話をうかがいつつ、蔵出しの酒を飲み比べるという企画。妊娠出産子育てでしばらく遠ざかっていたけれど、3年ぶりに参加することにした。
コピーライター時代にバカーディやカルヴァドスといった洋酒のコピーを書いていたわたしは、お酒にまつわるうんちく話を聞くのが大好き。お酒の味はよくわからないけれど、誕生秘話や裏話に耳を傾けながら、ほほう、それがこのお酒ですか、と一杯やるのが実に楽しく、飲み比べ(利き酒)より物語(聞き酒)に酔う。利き酒の会で知ったお酒の名前をよその店で見つけたりすると、旧友に再会したようなうれしさを覚える。
今宵の『天明』(曙酒造)の会は2度目の参加。蔵元の鈴木夫妻と『天明』の名付け親である酒ジャーナリストの中野繁氏(話術も魔術も一級で、ペットボトルに百円玉を入れてみせた)を迎え、串駒の一階と二階、すぐ近所の支店『串駒房』の三会場を三人で巡回。ちなみに『天明』は「夜明け」という意味があり、曙酒造から連想しての命名とのこと。こんなうんちく話を名付け親本人から聞けるのがこの会の魅力。
「姫」と呼ばれている鈴木夫人の酒造りの説明は、明るく楽しくわかりやすい。「はい、お酒が入りました。普通は樽で寝かせます。でも、上から使う分を取って行くと、表面が空気に当たってしまいますよね。なので、うちは作ったら瓶詰めにして冷蔵庫で寝かすんです」。大きな冷蔵庫と膨大な電気代が必要で、「だから、うちはお金が貯まりませーん」。0〜3度で保存できる冷蔵庫がある酒店だけに卸しているので、都内でも買えるお店は少ないとか。
自分たちが作りたいお酒を追求するために、長年勤めていた杜氏さんに辞めてもらい、試行錯誤しながら自分たちの手で『天明』を磨いているという鈴木夫妻。心からお酒を愛し、ひたむきに酒造りに取り組む姿勢に好感。毎年、田植えの季節には天明ファンが会津を訪れ、お酒に使われるお米を一緒に植えるのだそう。
『央』は、曙酒造から走って1分のところにある五の井酒店が、曙酒造が作った酒をアレンジして出しているお酒。鈴木夫人いわく、「五の井酒店のゴン太君がホースを引っ張っていって作っている」のだそう。このゴン太君が今日飲んだ7種類のお酒のコメントを書いたものが、さすが酒に日々向き合う人の言葉で、キレとコクがあって読ませる。大吟醸の五年熟成に寄せたコメントは「熟香と穏やかな吟香、崩れることなく残る線を旨味と優しさが包み込み、滑らかに喉へと誘います」とこちらも深い味わい。そのゴン太君が「皆様の審判をお待ちしています」とコメントした『央』の本生VS火入れは、挙手による人気投票の結果、火入れが2倍以上の差をつけて勝った。火入れというと直火にかけるイメージを持ってしまうけれど、実際には60度ぐらいで湯煎をすることらしい。それぐらいの温度で味に変化が現れるのが面白い。
1 天明 大吟醸 おり酒
2 天明 純米 亀の尾 本生
3 央 純米吟醸 黒ラベルK(中汲み澱絡み 無濾過本生原酒
4 天明 純米吟醸 山田錦(瓶火入れ瓶囲い)
5 天明 純米吟醸大吟醸 おり酒
6 央 袋垂れ純米吟醸 白ラベルN 瓶火入(無濾過 瓶火入れ瓶囲い)
7 天明 大吟醸 無加圧 美山錦 五年熟成(無濾過 瓶火入れ瓶囲い)
一緒に参加したダンナとご近所仲間のT氏とともに通された小上がりのテーブルには、単身で参加の男性が三人と、おともだち待ちの男性が一人。一時間ほど遅れて到着したお友だちも男性で、八人のテーブルで女性はわたし一人という構成。皆さん本当に日本酒が好きなようで、話題はもっぱら「うまい酒が飲める店」。おともだち連れの二人組は高校時代の同級生で、共通の趣味である日本酒を求めてあちこち飲み歩いているそう。この二人が三十才で、あとの六人は四十才前後と、ほぼ同世代。お酒が進むにつれて年齢をばらし合い、職業を聞き出し、会ったばかりの互いのことが少しずつ見えて来る。
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07月06日(日)
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