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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ マルセル・マルソー氏死去
 新聞記事でマルセル・マルソー氏死去を知る。母に連れられて大阪公演を見に行ったのは中学生のときだっただろうか。白塗りの顔で皺も塗りつぶされていたので年齢不詳だったが、享年84歳から計算すると、すでに60歳を超えていたことになる。一切言葉を発さず、身体だけで笑わせたり考えさせたりするパントマイムというものに、わたしは大いに驚き、当時の日記に「世界でいちばんパントマイムがうまいマルセル・マルソーを見た」と興奮して綴った覚えがある。遠い客席からとはいえ、生で観たことのある芸術家の訃報を目にすると、悲しみとは違う哀悼の気持ちがこみ上げ、同じ時代に生き合わせた幸運をありがたく思う。
 マルセル・マルソー氏の公演の他にもブロードウェイミュージカルやらウィーン合唱団やら、海を超えて大阪にやってきた芸術に触れる機会を母はたくさん与えてくれた。それが今の仕事を続ける栄養になっている。映画と違って舞台には子ども料金の設定がないものが多く、海外からの招聘公演となるとなおさらで、大人にも高値のチケットを子どもの分まで買うのはかなり贅沢な感覚がある。それでも自分の経験を思い起こすと、大人になる前に観たものから受けた刺激のほうが大きく、記憶の襞に刻まれているように思う。あの日大阪を訪れたマルセル・マルソー氏を観るチャンスをつかまえてくれた母に感謝しているし、今日一歳と一か月になった娘のたまにも、観る贅沢はさせたいと思っている。
09月22日(土)
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