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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ マタニティオレンジ55 ランドセルの紳士
娘のたまを抱いて自宅のマンションに帰宅すると、ランドセルを背負った男の子がインターホンを押し、「僕です」と家の人に言って玄関のオートロックを解除してもらっていた。開けたドアの向こうにいったん消えた男の子が、すぐに舞い戻ってくる。落し物でもしたのかなと思っていると、ドアをいっぱいまで開けて「どうぞ」と近づいてくるわたしを待つ。赤ちゃんを連れた住人が後ろから来るのに気づいて、咄嗟に引き返した様子。そうすることが当たり前というような迷いのない行動に惚れ惚れしてしまった。「困っている人を見かけたら手を貸しましょう」と日頃から教えられて身についているのだろうか。今度お母さんと一緒のところを見かけたら、息子さんの紳士ぶりを伝えたいと思う。そんな風にお母さんのことに思いを馳せるようになったのは、出産を体験してからの大きな変化のひとつ。
大丈夫ですか。気をつけてください。どうぞ。エレベーターの乗り降り、電車の中でもたくさんの人が気遣い、声をかけ、場所を譲ってくれる。親切や善意はいつでも取り出せるところに用意してあって、それを差し出す相手とタイミングを待っているだけなのだと気づかされる。妊婦や赤ちゃん連れというわかりやすい対象を見つけると、こぼれた水にハンカチが差し出されるように、さっとさりげなく手が差し伸べられる。以前は電車で席を譲られると、遠慮して「いいです」と断ってしまっていたのだが、そうすると相手は引っ込みがつかなくなった善意を持て余し、居心地が悪くなってしまう。だから最近はありがたく甘えさせてもらい、相手が先に電車を降りるときもこちらが先に降りるときも、あらためてお礼を言う。親切を受ける側の身のこなしも、慣れてくると、自然でスマートになる。
01月08日(月)
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