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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ シナトレ5 プロデューサーと二人三脚
脚本作りはプロデューサーと進める。書くのは脚本家だけれど、アイデアを出し合ったり、直しの方向性を探ったりする作業はプロデューサーとの二人三脚。プロデューサーが複数の場合もあるし、監督が最初から関わる場合もあるけれど、プロデューサーと脚本家がある程度まで本を詰め、会社のGOが出てから監督が加わるケースが多い。初稿から改訂を重ね、決定稿に持ち込むまでに、脚本は大きく変化し、成長する。脚本家一人だったらここまでダイナミックな変身はしないと思う。
そう考えると、コンクールに応募する脚本家の卵にもプロデューサーがいたら……となる。自分の書いたものを客観的に読み、意見やアイデアや方向性を与え、ときには喝を入れてくれる存在。自分以外の視点が入るだけで、見落としていたたくさんのことに気づかされる。わたしの場合は、彼氏と大阪の母と元同僚のアサミちゃんが「ご意見番」だった。彼氏は「おもしろい」か「つまらない」しか言わなかったけれど、彼が「つまらない」と言ったものはことごとく落選した。母の言いたい放題のコメントの中には、ときどき、ドキッとするほどの光るアイデアがあった。そして、わたしをデビューさせたいちばんの功労者はアサミちゃんだった。お芝居を観るのが大好きなデザイナーの彼女は、「一人の視聴者(観客)」として、「どうやったら、この脚本がもっと面白くなるか」を真剣に考えてくれた。その証拠となるものを先日、押入れの奥から発掘した。1999年に書いた『ぱこだて人』のシナリオを読んでの彼女の長い長いコメント。
うん、もうとにかく“シッポ”という素材が実にユニークで、映像化してみたい感じですね。ただ、細かいこと言うようで申し訳ないが、速報で長尾社長以下、重役の方々が謝罪し、「あれは副作用です」とシッポについてのお話しが公式にあったら、私だったら、損害賠償責任追及と同時に、整形外科で手術し、切除することを考えると思います。シッポがあることが、後天性原因不明の病気だとしたら、それはもしかしたら最初のうちは必死に隠そうとするかもしれない。例えばエイズのように。でもこの場合、原因は副作用にある、と判ってますから、それに同じシッポ人間、すでにマスメディアで謝罪かねがね放映されているわけで…。
きっと突然変異のシッポ人間達はその画面を見て、「僕(私)だけじゃない」とホッとすると同時に、怒りへと気持ちが変わっていくと思われ…。ましてや男性から女性、女性から男性へと、チョンギッたり、貼り付けたりが可能な今世紀。なかなかシッポと共存の道は考えないんじゃないか。だとしたら、社長の謝罪は最後にもっていき、あくまで原因不明のままシッポが生えてきてしまった、古田さん以外にひかるちゃんはシッポ人間の存在を知らない、みたいな内容でお話が進んでいくというのはどうでしょうか。必死にかくす側とそれを追求し記事にしようとするハイエナのような側と、その中で、もう追い詰められたひかるちゃんがメディアに出る。メディアに登場した後のくだりはとてもオモシロイと思います。アイドル的存在のひかるちゃん。パコダテ言葉誕生。パーコードの服がバカ売れと、禍転じて福となすを絵に描いたような展開、とてもワクワクして読みました。
ただ、反パコダテ人派の勢力が弱い気がする。今井ちゃんの性格上、あまり意地悪やドロドロは苦手なのかもしれませんが、あとほんの少し、橋田寿賀子チックな陰湿な部分があっても良いかもしれない。それらに責められ悩むひかると家族。マスコミも、最初は美人シッポ人間とうたっておきながら、今度は反パコダテ人派の人間に躍らされ、あることないこと記事にしてしまう。それにより、パコダテフィーバーが一瞬火の消えてしまったようになる。でも冷静に考えるとパコダテ人もウルトラシップの被害者だし、みたいなところでマスコミの謝罪があったり、反対派との和解があったりってな具合に、ちょっぴり陰湿な意地悪チックなものが入ると、より今井節のエッジが立ってくるような気がします。
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03月02日(木)
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