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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ シネマ大吟醸!神保町シアターで『絹代の初戀』(1940年製作)
ヒロインが御曹司に一目惚れする歌舞伎座前の場面、打ち合わせで通い慣れた松竹界隈の70年前の風景にハッとなり、胸を打たれた。現在松竹本社が入っている東劇は当時すでにあったのだろうか。一瞬映った歌舞伎座から東劇を望むアングルの引き絵は、様変わりしたようで今に通じる風景だった。これなら画面の中に迷い込んでも方向を見失わずに歩けそうだ。歌舞伎座の雰囲気は今と変わらないように見え、少し前に新聞で見てげんなりとなった高層ビルの「新・歌舞伎座」の完成イメージ図を思い出し、あれはイカンとあらためて思った。家に戻って調べてみると、歌舞伎座は過去にも大改築や漏電による焼失があり、現在の建物の原形である奈良朝に桃山様式を併せた大殿堂が落成したのは大正13(1924)年12月のこと。それも昭和20年の空襲で焼失したが、昭和26年に復興し現在に続く建物の外観は大正版を受け継いでいる。ならば、今回の改築でも守り伝えて来た形に敬意を表すべきなのではと思ってしまう。今の最先端はどっちみちすぐに古くなるのだから、中途半端に新しくして伝統を断ち切る必要はない。映画人でもある石原都知事に『絹代の初戀』のこの場面を観て考え直していただけないものか。

『シネマ大吟醸』のなかにある「失われた風景を見るには映画が最適だ。しかも記録映画と違い作家の感性が入っているから、映画こそがその時代の最も美しい記録となる」にしみじみと同意しつつ、日本は失うスピードが早すぎるのではないかと思ってしまった。

『絹代の初戀』は4月15日(水)16:55、4月16日(木)13:45、4月17日(金)19:00にも上映あり。他にも味わい様々な大吟醸をそろえた「昭和の原風景」は5/8まで。『シネマ大吟醸』あとがきいわく、「日本映画は大まかに、映画誕生からサイレント期までを『大トロ』、以降戦前の作品を『中トロ』、戦後の白黒作品をまでを『レトロ』と分けられ(笑)、狙い目は昭和10〜20年の中トロだ」。その中トロ中心のラインナップ。それにしても酒にたとえたり、肴にたとえたり、太田氏は相当食べることが好きな人のよう。この人と日本酒飲みながら映画の話をしたら楽しいだろうなと想像するが、「今みたいなお粗末な勉強量では話についていけませんよ」とT氏にしかられそうだ。

04月14日(火)
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