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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ SKIPシティ国際Dシネマ映画祭9日目 クロージング
クロージングパーティでは、オープニングのときよりもたくさんの人と話ができた。『ザ・クラス』のイルマール監督とは「脚本を書くとき、構成を決めてから書く?」「次回作は?」なんて話をした。映画を撮るためにテレビ局を辞めた監督の次回作は、いじめとはがらりとテイストを変えて、WOMANの話。実際にあった出来事をベースにしているところは共通しているけれど、こちらはハートウォーミングなお話とのこと。神楽坂の飲み会で会ったセシリア亜美北島さんも話題に加わり、脚本の書き方について話す。アルゼンチンからの帰国子女のセシリアさんは構想中の商業用長編を映画祭のDコンテンツマーケットでプレゼンし、興味を持ってくれるところが現れたので、夏のうちに初稿を書き上げたい、と意気込んでいる。今年観る側だった人が来年は出す側になるのかもしれない。

2才の息子リノ君を見てひらめいた物語に、血のつながっていない父親役として出演した『Lino』のジャン・ルイ・ミレシ監督に「もうすぐ2才になるうちの娘もリノ君とおんなじことします!」と伝えたくて話しかけたのだけど、監督はフランス語しか話せない。「わたしにも娘がいる」と伝えようにも「娘」の単語を知らないので、「J’ai…小さい…女の子…」と口ごもっていると、「君にも子どもがいるのか?」っぽいフランス語が返ってきた。「その娘がですね、Lino aussi(リノも)」と怪しいフランス語ながらも気持ちは通じた様子。

フランス語をちょこっとかじったのはカンヌの広告祭に行った10年前だけど、世界中から人が集まって来て話したいことがどっさりあるお祭りに居合わせると、もっと言葉ができたら、と思ってしまう。パーティが始まる前に話しかけた『囲碁王とその息子』のジョー・ウェイ監督、囲碁王役と息子役の役者さんにも、自分の言葉で感想を伝えられる中国語を持ち合わせていなかった。寡黙なホン・サンス監督とも、韓国語ができればもう少し突っ込んだ会話ができたのではないか。英語も磨きたいけれど、スペイン語、フランス語、中国語、韓国語、いろんな言葉で、せめて「あなたの映画はよかったよ」と伝えられるようになりたい。

初日に出会った『Under the Bombs 戦渦の下で』の助監督兼スタイリスト兼ジャーナリスト役のビシャラさんは、英語とアラビア語の他にフランス語も少々という言葉の羽根に加えてバツグンの人なつっこさと愛嬌でパーティ会場を飛び回り、すっかり人気者になっていた。「大好きな日本に来れたことが、すでに賞だよ」と喜び、「レバノンは今も戦渦の下。いつ爆弾に当たって死んでもおかしくない。戦争は僕らには日常。爆撃の音で眠れないのは最初だけ。そういうことを僕という人間を通して日本の人に知ってもらえたら、この来日には意味がある」とも言っていた。レバノンという国への大きな親近感と興味をお土産に置いて行った彼はダンサー、振付師でもあり、コスチュームデザインも手がける。わたしに会うたびに着ているものを面白がってくれた。名刺の肩書きは「artist unlimited」。「やりたいことがあるうちは死なない気がする」と言っていた彼が、どうか爆弾に当たることなく才能を発揮し続けてほしいと願う。

リトルDJとなってパーティを盛り上げてくれたのは、『囲碁王とその息子』の子役君。とてもきれいでまっすぐな目をした利発そうな彼の今後も楽しみ。


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07月27日(日)
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