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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ いい広告を作るには、いいオンナになれ。
といった具合。それに対して上司は、「仕事をこなすごとに、くやしがったり、反省したり、感心したり、よろこんだり、いろいろ感じているが、それを自分のこやしにしている、次の仕事に生かしているのはいい。コピーにいいものを持っているので、それをチョイスし、なぜいいか理解できる力を早くつけること」「パワーのある広告づくりをするためには、地味なつみかさねが必要。今の努力が必ず何年後に生きてくる。正しいプロ意識を養ってほしい」などと記している。「広告」を「脚本」に置き換えても通用するアドバイスばかり。「いい脚本を書くためには、魅力的な人間になってください」なんてシナリオ講座などでえらそうに言っているけれど、それは15年前の上司の言葉の受け売りだったのだ。
この上司からは「お前のコピーは核心を突くにはほど遠い。大気圏の外をさまよっている」とダメ出しを食らい続け、自分の能力を過大評価していたわたしはあり余る若さをぶつけて全力で反発し、「今井の相手をしていると、疲れるよ」とぼやかせていた。「最初はガッツが空まわりしていたが、だんだんギアがかみ合ってきたようで、これからが楽しみです」という所属長のクリエイティブディレクターのコメントもあり、「今井にあるのは独創性と協調性ではなく、独走性と強調性」と言われた新人時代の暴走ぶりがうかがえる。
でも、苦笑しつつも面白がってわたしを引き受けてくれる上司に恵まれたおかげで、わたしは同じ会社に12年もいられた。あんまり楽しくて居心地が良くて、脚本の仕事が忙しくなってからも、辞めますとなかなか言い出せなかった。『』に、わたしは「宝物は自分の中にある。それを宝の山にするのも、宝の持ちぐされにするのも自分次第」というメッセージを込めた。わたしがいた会社は、今井雅子という石ころを磨くのに最高の場所だった。そこで出会った人たちや出来事、あの12年間はまるごとわたしの宝物。いいオンナになれたかどうか自信はないけれど、キラキラするものをたくさんもらった。
05月26日(月)
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