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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 想像力という酵母が働くとき
その光景を見て以来、自分のメソポタを一休みして、その女の子のことを考えている。彼女は家に着くまで「ごめんなさい」を繰り返したのだろうか。家に着く頃にはお母さんの機嫌は直っただろうか。レジの順番が迫って焦ってなければ、あんな言葉にも、あんな言い方にもならなかったのだろうか。「もういい!」はりんごジュースのことだけを指していたのだろうか。女の子には「あんたなんか、もういい!」と聞こえなかっただろうか。彼女の目に悲しみと諦めが宿っているように見えたのは、センチメンタルになっているわたしの錯覚だろうか。身近で信頼している人からの不意打ちの鋭い一言は、深い傷を負わせる。殴られるのと同じで、至近距離からの一撃は、こたえる。自分が娘の親になったばかりということもあり、生協での母娘の姿に自分の未来を重ねたり、母の何気ない言葉に傷ついてさめざめと泣いた過去を思い出したりした。やわらかい言葉であれ、棘のある言葉であれ、それを受け止める側の想像力と掛け合わされて、言葉はさらなる力を持ってしまう。ビルの上から落としたパチンコ玉が、加速するうちに人を貫くほどの力を帯びてしまうように。そのことに思いを馳せて言葉を解き放たなくては、とわが身を振り返っている。

06月12日(火)
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