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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 感動の涙が止まらない映画『虹をつかむステージ』
わたしが高校の教育実習でいちばん燃えたのは、文化祭の劇の指導だったのだけど、指導者がどんなに熱くなっても、生徒自身が動かないことには舞台は成立しない。生徒一人一人にやる気を出させ、ひとつにまとめ上げるには、ものすごいパワーが要る。社会という大舞台に生徒たちが立つときのことを見据えた渡部先生は、泣いたりすねたり落ち込んだりする生徒たちに、ごまかしのない直球で叱咤激励する。歯切れはいいけれどあたたかい言葉で、「やればできる」「あなたはあなたのベストを尽くせばいい」というメッセージを送り続ける。甘やかしはしないが、生徒のやる気と個性を伸ばす努力は惜しまない。舞台に没頭した学生時代の経験を活かして演技指導に工夫を凝らし、自分のイメージする舞台に生徒たちの力を引き寄せていく。たとえば、「葉っぱが色づく季節」を体で覚えさせるため、紅葉の舞う公園に生徒たちを連れて行って練習させる。
なんて豊かな教え方なんだろう、特殊教育ではなく特別教育だと感心した。生徒たちは先生の求めるレベルの高さに愚痴をこぼしながらも「観客を感動させたい」という目標を持って食らいついていく。そして、これが同じ生徒なんだろうかと見違えるほど、彼らは役を自分のものにし、台詞や歌に魂をこめていく。「今生きている」と力強く歌い上げた生徒たちは、胸を張って社会にはばたいていく自信と勇気を手にしたと思う。『夢追いかけて』つながりで出会えたこの作品は、渡部先生から生徒への手紙で締めくくられるのだが、その書き出しが「見果てぬ夢を追いかけて」となっていたのも印象深かった。
09月11日(土)
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