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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ じゅうたんの花の物語
お父さんは子どもたちをぎゅっと抱きしめました。
「わーい、海だ! うちに海が来たよ!」
「わーい、森だ! うちに森が来たよ!」
子どもたちはじゅうたんの森を歩いたり、じゅうたんの海で泳いだりしました。力を合わせて織り上げたじゅうたんは、とても丈夫で、あったかいのでした。
「このじゅうたんがあれば、わたしたちは海や森の中で暮らせるわね」
お母さんはにこにこしながら子どもたちを見ていました。家族みんなが寝転がれるぐらい大きな大きなじゅうたんなのでした。
子どもたちはじゅうたんを織るのが大好きになっていました。毛糸を染めるお手伝いも、その毛糸を作ってくれる羊の世話をすることも、いやがらなくなりました。じゅうたんを織るときは、自分たちが見たい景色を織るようにしました。誰も見たことのない珍しい模様のじゅうたんが次々と出来上がりました。そのじゅうたんは、買った人たちも幸せな気持ちにするのでした。■この微笑ましい物話には、「一枚の絨毯が持つ豊かさ」を教えてもらい、「色の豊かさと心の豊かさ、糸の結びつきと心の結びつきを重ねて描きたい」という方向性を指し示してもらった。脚本の初稿には、絵を描くさくらにルーズベ少年が「日本を連れてきて」と言う台詞を入れた。その台詞はなくなっても、この物語から得たものはスープになって作品に溶けてくれたことを願っている。
01月04日(日)
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