ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
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■ 余録一覧 〜 List of Extras 〜
 
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│ adlib/20250202

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 余録一覧 〜 List of Extras 〜
 
 山陽路に住む老人のブクログ余録一覧
 
 人生は、アクセル・ブレーキ・ハンドルの三件分立が必要だ。
 アクセルだけでは衝突する、ブレーキだけでは進まない。
 ハンドルさばきに頼ると、流される。兎角この世は住みにくい。

 漱石《草枕》は、あらいざらい先に書かれて、つまらない。
 
…… 山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹さ
せば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ引越したくなる。どこへ越しても住
みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。(一)(20131205)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/776_14941.html
 
── 夏目 漱石《草枕 19060900 新小説 20120927 Kindle》
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B009IXKOFQ
 
 有名すぎる一節で始まる草枕は、漱石初期の作品群のなかで異色の小
説だそうだ。小説のようで旅日記のような感じ。主人公の絵描き(画工)
の口を借りて漱石自身のぼやきが聞こえてくる。
 
「世の中はしつこい、毒々しい、こせこせした、そのうえ図々しい、い
やな奴で埋まっている。元来何しに世の中へ面をさらしているんだか、
解しかねる奴さえいる。しかもそんな面に限って大きいものだ。浮き世
の風に当たる面積の多いのをもって、さも名誉のごとく心得ている。五
年も十年も人の臀に探偵をつけて、人のひる屁の勘定をして、それが人
世だと思っている。」
 
 大文学者夏目漱石にして、この江戸っ子丸出しの啖呵きり。まるで下
町の店屋のオヤジのようで、痛快さに思わずニヤリとする。
 
 画工は旅先でひとりの女に出会う。御那美という宿屋の娘、バツイチ
は毒蛾の羽と謎めかした態度で男と読者を誘惑する。ひそめやかした過
去がまた興味をそそる。
 そのふたりの会話の軽妙さが、さすがに漱石だと思わせるほどなのだ。
 
「私が身を投げて浮いているところを、―苦しんでいるところじゃない
んです―やすやすと往生して浮いているところを、綺麗な画にかいてく
ださい。」 「え?」 「驚いた、驚いた、驚いたでしょう」
 
 女はすらりと立ち上がる。三歩にして尽くる部屋を出るとき、顧みて
にこりと笑った。茫然たる事多時。
 
 那美が自殺を仄めかした理由は、のちに繋がっていくのだが、この、
池に身を投げるというイメージが男と読者の頭をとらえ、離れなくなっ
てしまう。
 赤々とした椿の花がぽたぽたと垂れ落ちる静かな池の表。グロテスク
なまでに鮮烈な色の対比の中に、女が横たわり水に浸かって動かない。
 ゆらゆらと白い着物がたゆたい、その下の方では水草どもが絡まりあっ
ている。
 
 オフィーリアは、長いあいだ憧れとも恐れともつかぬ想いで反芻し続
けているイメージである。絶望と愛の涯に自らを水に投げた女の姿。ル
ドンのオフィーリアとウォーターハウスのオフィーリアが代わる代わる
網膜に現れては、そこに椿の赤と着物の白が混ざりあい、なんともつか
ぬ混沌がぐるぐるとした。
 
 ルドンのオフィーリアは、天使のような輝き。不幸の影はなく、死と
は美であるといった趣なのだ。みずはどこまでも青くひかり、女の肌は
けぶりを吹いたようにきめ細かく、身投げというよりも天上に迎えられ
た天女のよう。(20180913)
 
── 塙 保己一《群書類従(正・続・続々)全133冊 20141001 八木書店》
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4840631417
 
 オフィーリアと世間
 
 ウォーターハウスのオフィーリアは、死への恐れとそれに勝る嘆き。
思い詰める女の、ナマ身の艶がありありとしてい、そこに引き込まれる。
死を描き、生の美しさを見せる。
 
 漱石は、群を抜いた文筆力と博覧の知識を持ちながら、初期の作品に

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02月02日(日)
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