ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
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■ 隣家不干渉 ​〜 Neighboring house non-interference 〜

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 隣家不干渉 ​〜 Neighboring house non-interference 〜
 
 結婚前、与太郎が婚約者の叔母との雑談で「新妻に運転免許を取らせ
たい」と語ったところ、即座に反対された。
「姪は運動神経が鈍いので、運転は無理です」という。
 
 町内で一番に買った頃、父も「自家用車に乗れるとは思わなんだ」と
述懐したが、東京時代に「これからは、マイカーと不動産の時代だ」と
肝に銘じて帰郷したのに、思いもかけぬ伏兵があらわれた。
 
 東京で、いくぶん手応えを感じたので、中大中退の友人を説得して、
マネージャーとして雇う決心をした。まずは質屋に入れていた背広上下
を請出し、ジャルパックの真っ赤なカバンを持たせた(馬子にも衣裳)。
 
 つぎに、中古バイクを買って、普通車の免許を取らせるまでに十万円、
あとは中古車を5万円で買うつもりだった。計十五万円は、年収相当の
投資だったが、寺原は、すぐに挫折して、帰郷してしまった。
 
 東京から九州に戻る途中、京都の与太郎を頼ってきたので、四千円を
渡した。故郷に戻って氷屋の配達などして、両親や妹を養い、のち三菱
キャタピラの営業所長になり、最後は離婚したそうだ。
 
 帰京後の与太郎は、なによりも運転免許を取るのに、半年もかかった。
 そしてすぐに22万円の中古車を(町内で一番に)買った。
 一家に一台、ただし運転できるのは、与太郎ひとりだった。
 
 そこで結婚したら、新妻が出産する前に免許を取らせようと考えた。
 こういういきさつや経験を知らない、妻の叔母が、世間話の延長で、
独断的な意見を述べてしまった(とても反論する気になれない)。
 
 いま思えば、ベンツが発売されたとき、社長夫人が実際に運転する姿
を宣伝したそうだ。(この話は、はるか老人になってから知った)
 のちに田舎ぐらしになって、ようやく妻はバイクの免許を取った。
 
 結婚後、たちまち商売に暗雲たちこめ、生家を売り次いで、最後には
商店主の座を失った。出産後の妻が働くにも、なんの資格もないので、
行動半径は自転車で往復できる距離に限られた。
 
 与太郎も、まさかここまで落剝するとは予想していなかったが、もし
運転免許があれば、妻は離婚して自立する可能性もあったのだ。
 要するに、未来を見たことのない老女の一言で、道が閉ざされたのだ。
 
 もちろん、すべての責任は与太郎自身にある。だがしかし、結婚前に
友人を雇い損ねたものの、当人が、いっぱし管理職にありついだ経験は、
誰にも評価されなかった。老人の知恵など、漬物石のように重いだけだ。
 
 今日は、78歳の老妻が、バイクの免許を更新したらしい。いつまで
有効なのか、いつまで乗れるのか、誰にも予想できないが、小室夫妻の
将来に、あれこれ意見を言う人たちに、我慢がならない。
 
 なんの知識も知恵もない者が、他家の将来を案じるのは、許しがたい。
 眞子さまに、最後に無言での抱擁をした妹君こそ、唯一の味方だった。
「がんばってね!」 沈黙は、雄弁にまさるのだ。Sound of Silence !
 
(20211111)

〔book〕
 
── 児玉 隆晴・伊藤 元・上芝 直史《新民法(債権法)の要点解説
〜 新旧条文対照表付 202000229 信山社》
 法曹親和会民法改正プロジェクトチーム・制作
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4797270594
 

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