ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
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■ 給油疑惑 〜 単身赴任と遠距離通勤 〜
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20071021
サラリーマンにとって、不合理な残業はもとより、単身赴任や遠距離
通勤が、諸悪の根源である。帰省のための交通費を、領収書が要らない
「みなし給与」として支給すれば、なにがしか釣りが出ることもある。
単身赴任の多羅尾課長は、週末ひとりでは淋しいので、ついつい高速
道路を使って、家に帰ってしまうことが多くなった。高速料金のうち、
社用チケットで足りない分だけが自己負担である。
土曜日にガソリンを補給するので、頃合を見はからって営業本部長が
マイカーで随いてくるようになった。
多羅尾の車に給油したあと、おなじホースで本部長の車にも入れる。
満タンで60リットルしか入らないはずの指定車に、90リットルと
印字された伝票にサインすると、月末に請求書が届く。
経理課は気づかないふりで払ってくれる。
こういう不正がまかり通るのは、いくつかの微妙な条件のもとである。
経営者や経理課からみて、月々ある程度の営業成績をキープしている
多羅尾課長を、わずか数万円のことで荒だてたくないのである。
ついでに怪しからぬのは本部長だが、彼を突っつくとヤブヘビになる。
そこで社長は、多羅尾の席のあたりに総務課長を呼んで、立ちばなし
を装って、こう云ってみる。
「過去数ヶ月のガソリン代金が、特定の曜日に集中していないかどうか、
チェックしたまえ」「はい、分りました。しかし、何のためですか?」
「いいから、云ったとおりにするんだ!」
そして、その結果は、誰にも知らされなかった。多羅尾に、こういう
疑惑があるのだ、ということを伝えるだけでよかったのだ。
つまり「やるならもっと巧妙にやれ」と警告したのだ。
これは、かならずしも多羅尾が重用されているからではなく、いざと
いうときに、問答無用で馘首することができるのだ。
すなわちこれが、ぬきさしならぬ“ズブズブ”の関係である。
そこで多羅尾が、土曜と月曜に給油していたのを、金曜と火曜に変更
すると、それまで日曜日前後に消耗している形跡がボヤけてしまった。
本部長も、なるべく不規則な曜日に随いてくるようになった、とさ。
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10月21日(日)
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