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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 時のあとさき 〜 音の上り下り 〜
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20070527
ケーブル・カー(登山電車)の傾斜角度は、全コースの平均値を採用
していない。それだと、どこにも快適な箇所がない場合が起こり得る。
そこで、もっとも長い区間の傾斜角度に合わせてあるそうだ。
── 自伝を貫く三重の時──過去から現在に向かう時、現在から過去
に向かう時、および永遠の現在──という構造でした。
── 中川 久定《自伝の文学 1979012 岩波新書》P175-176
われわれは、昨年から現在までの一年と、現在から来年にいたる一年
を、おなじ長さだと認識しているわけではない。
あるいは、階段を上るのと下るのでは、どちらが疲労するのか。
いわゆる計量物理学では、まったく同じエネルギー量だが、心理的な
ストレスによる個人差や、経験的な筋力偏差もあるはずだ。
ここでは、不均衡な音程が、平均律にまさる例を記しておく。
上昇律 G A B^C → C D E_F → G A B^C
平均律 過去 > 現在 < 未来
下降律 G A B_C ← C D E_F ← G A B_C
主音につづく半音を“導音”と呼ぶ。カザルスの“上昇音程”では、
導音Bが主音Cに向かって、すがりつくように、せつなく迫る。
EがFにつづく場合は、それほど接近しない(うわずらない)。
その逆に、主音CからB、FからEへの“下降音程”も接近しない。
親鳥が、卵を産みおとすように、なだらかに下降する。
これらは、和声法とは関係がなく、旋律を主とする慣用らしい。
おなじようにクラシックを学んでも、コーラスなどでハモらせると、
どことなく音程が不安定な人は、このあたりの微調整ができないのだ。
もちろん弦楽器や管楽器でも、もって生れた音感によるらしい。
鍵盤楽器では、そのつど曲にあわせて調律することは困難である。
よほどの名手なら、楽器の他に譜めくりと調律師を、自前で伴なう。
(戦前の巨匠は船で運んだが、赤道直下の異変が致命的だった)
“表現する音程”
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19731022
── 《カザルス略年譜》
調律しだいで曲想そのもののイメージが定まってしまう例がある。
独奏ピアノの独創的な単旋律で始まる点で、すでに意表をついてる。
ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第4番ト長調Op.58》18081222 初演
── グールド独奏、バーンステイン指揮、ニューヨーク・フィル
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19710708
19710812 レコード・サロンC 〜 Paper Concert 〜
長調とも短調とも分らない単旋律の第一主題に、ややあって弦楽器群
が控えめに短調の第二主題で呼応するという趣向である。
第5番“皇帝”の雄々しさに対して、あくまで典雅である。
むかし老父の前で、はじめて三味線伴奏の《田原坂》を謡ったところ、
座敷あそびの大先輩は「まだまだ一人前やないな」と放蕩息子に最後の
授業を施した。── 《ポール先生、さようなら 19720813 虚々日々》
父は邦楽はもとより、洋楽にも知識はないが、いったん洋楽の和声に
汚染された旋律(節まわし)が、正調にもどらないことを指摘したのだ。
このことについては、いずれまた。
深夜のクヮルテットを聞きながら。
http://q.hatena.ne.jp/1175539309
── 映像散歩《名曲コレクション 20070528(月)02:55〜04:20 NHK》
(20070527)
05月27日(日)
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