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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 経済美学入門
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20060217
◆ 与太郎の経済学
かつて、ある年代までは、大工の日当は材料費に等しく計算できた。
一本1万円の材木を仕入れて、これを加工して完成するまでの工賃を
1万円と概算する。腕次第なので、一日で完成すれば日当1万円である。
腕が悪かったり、未熟だと二日かかるから、日当は5千円となる。
その結果、どんな仕上がりでも客の払いは合計2万円になる。
この概算法は(最近では)日当>材料費となって久しい。
このような計算を、デザイナーに適用すると、妙なことになる。
材料費は、わずかな絵具と紙切れだから、説得力にとぼしいのだ。
下手な画家と同じで、描かないままのカンバスの方が値が高い。
◆ 秘書の給料
法廷映画《或る殺人》では、貧乏弁護士が調査の途中や裁判の最中に、
秘書にむかって「キミはクビだ」などとという。
すると、年増の秘書(未亡人?)は、平然とやりかえす。
「いいわよ、いままでの給料を払ってくれればね」
彼女は、なんだかんだ云いながらも、この弁護士に惚れているらしい。
(いつか口説いてくれる日を待っているのだろうか)
この映画を観たのは、与太郎二十一才のころ(19600130)である。
与太郎は、この秘書が何ヶ月も払ってもらえないことに疑問を抱かず、
雇い主もまた払わずにいることにも、さほど不自然だとは思わなかった。
ところが、二十八才になった与太郎は、複数の店員に給料を払うこと
が苦しくなってみて、はじめて現実に直面したのである。
とても、このような雇用関係は成立しない(三月もたない)のだ。
給料がおくれおくれになっても、続くような雇用関係では、いかなる
条件が必要か。すくなくとも秘書は、わかい頃の貯金か、亡夫の遺産か、
親ゆずりの資産を切りくずしているのだろう。弁護士はスッカンピンだ。
♀Arden,Eve 19070430 America 19901120 83 /《牛乳屋》19901112没?
Stewart,James 19080520 America 19970702 89 /《翼よ、あれがパリの灯だ》
♀Remick,Lee 19351214 America 19910702 55 /《酒とバラの日々》
── Stewart,James《Anatomy of a Murder“ある殺人”1959 America》
http://www.articles.dvdbeaver.com/film/post/Anatomy%20of%20a%20Murder%201959.jpg
◆ はだかの請求書
キャバレー時代に、つぎのような出演料の納品書を見ている。
「朱雀 さぎり(ヌード)、@7500円、数量(3回)、小計22500円」
ちなみに当時の高卒初任給が7500円、与太郎は月給15000円だった。
商店主だったころの与太郎は、売りあげた商品の請求書を書くことに、
まったく抵抗がなかった。「商品にはストーリーがある」などという説
をとなえて、独自の伝票システムを開発したほどだ。
ただしデザイナーとしては、みずからデザインした作品に値をつけ、
納品書を出すという行為が、とても気恥ずかしかったのだ。
このような不調和な感覚が、実に四十才すぎてもつづく。
有賀のゆりさんの(最初の)チェンバロ・リサイタルが終ったあと、
関係者あての礼状「ご挨拶」を受けとった。この礼状にいたるまでも、
与太郎のデザインだから、たんなる儀礼として受けとったのである。
そのまま車のダッシュボードに投げこんでいたが(なにかの拍子に)
発見して驚いた。まさか現金がしのばせてあるとは思わなかった。
すぐに「お礼」に伺うと、のゆりさん母娘は笑って応対された。
与太郎にとっても帰郷後の初仕事だったが、その後も数年間ほとんど
友人知人からの依頼や紹介だったので、値段を決めたり、領収書とひき
かえに金を受けとるのには、いつまでも抵抗があった。
かなり経ってからも、そのまま言いそびれていたら、半年のちに現金
書留が送られてきたこともある。依頼主にすれば、印刷屋に支払ったの
で一件落着だと思っていたらしい。
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02月17日(金)
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