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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 空の夢 〜 気球とボート 〜
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20010320
 
 おととい(ゆうべ)見た夢。空とぶ夢は、性的欲求不満らしいが……。
 貸しボートならぬ、貸し気球というものがあって、前にも夢で乗った
記憶がある。記憶といっても、夢の世界における記憶にすぎないが。
 
 気分がよかったので、今度は女房を連れて、もういちど乗ることにする。
 ビルのエレベーターに乗ると、最上階に着いて、切符を買う。
 このとき免許証を見せる(運転免許があれば、飛行船も操縦できる)。
 
 ふと考えた。途中で気分が悪くなって、倒れたりすると女房があぶない。
 そこで、運航中に女房にも操縦方法を伝授しなくてはなるまい。
 ときにパイロットが気を失ったりして、素人の乗客が管制塔の指示だけ
で着陸に成功した実例もある。
 
 発進にあたって、ローソクのようなものに点火する。
 これがうまくいかないので困っていると、目が覚めた。
 ガソリンは2リットルあればいいという。
 
 着地も意外に簡単だ。手頃な空地(学校のグラウンド)が適している。
 ハンドルを動かすと、風の向きにしたがって、ゆっくりと方向転換も
できる。このたびの夢には、つぎの三つの特徴があった。
 
1.空とぶ夢は、性的欲求不満だと、フロイトが云ったらしい(*)。
2.夢のなかに、前の夢の記憶が存在するらしい。
3.目覚めてすぐに、別のエピソードを思いだしたこと。
  
 ◆
 
 夢の記憶と、現実のエピソードは、まるで関連がないように思える。
 別のエピソードとは、小学校五、六年のころの実話である。
(その日の写真も、アルバムに貼ってある)
 
 父と母に連れられて、京都洛西の鳴滝に遊んだ。
 広沢の池(周辺)に、貸しボートを見つけて、二階の座敷に上がった。
 父は昼酒を呑み、ひとり息子が貸しボートを操るのを眺めていた。
 
 親子三人の、しあわせなひとときだった。
 帰りがけに「もういちど来て、もう一度ボートに乗りたい」と云うと、
数ヶ月のちに実現したのである。
 
 おなじように父が昼酒を呑み、母が酌をしながら、ひとり息子が操る
ボートを見守った。小一時間ボートを楽しんだ息子が、座敷にもどると、
母が云った。
 
「ここの人に聞いてみたけど、なんならボートを買取って(契約して)
いつでも乗り放題にできるらしい」少年は、とても幸せな気分になった。
 裕福な両親に恵まれて、こんなに楽しい時間が過ごせるのだ。
 
 存分に満足して帰ることになった。帰り途で、母が父に云った。
「ちょっと鳴滝の別荘に寄ってみよか」「そやな、このあたりやったな」
 別の道に進んで行くと、巨大な岩石を積みあげた広壮な屋敷があった。
 
 母が懐かしそうに「ここや、わたしらが新婚時代に住んでいた家や」
と指さした。父も岩石を見あげてうなづいた。
 息子は、あまりに大きな家を見て、あっけにとられてしまった。
 
 まさに生まれてはじめての大きな家だった。以前アルバムに貼られた
写真で見たような気もするが、まさかこれほど大きいとは思わなかった。
 まるで勝ち誇ったように、通りすがりの外来者を見くだしていた。
 
 どうして両親は、こんな大きな家に住んでいたのか。どうやら自分は
この家の中で産まれたのではなく、胎中にあったにすぎないらしい。
 母の腹が大きくなったので、いまの借家に引越したとは聞いていたが。
 
 かねがね母は「まだ壁が濡れていた」と自慢していたが、しょせんは
借家だったのだ。みるみる息子の心は、しぼんでいった。
 さきほどまでの幸せな昂揚感は、みるかげもなく消えうせてしまった。
 
「なんや、なんでや?」十才の少年には、それが理不尽な感情であると
分っていたが、あらたな不条理が湧きあがってきた。
 しかし、許しがたい気分を、父や母に抗議する根拠も見あたらない。
 
 ついさっきまで裕福に思えた両親の姿は、この広大な屋敷の前では、
貧しい通行人にすぎなかったのだ。傷ついた少年は、わが家に戻っても

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03月20日(火)
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