ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
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■ 四月二十三日の忌譚
 

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 ハムレットとドン・キホーテの作者は、「奇しくも同じ日に没した」
と伝えられて久しいが、旧暦と新暦の日付が同じために生じた誤解で、
実は十日間前後する。誰がまちがって、誰がただしたのか。
 
 男の典型を対比したツルゲーネフの講演《ハムレットとドン・キホー
テ》によってそれぞれの作者は対等に評価された。狂気とエゴイズムを
凝視した近代的手法とともに、同世代の作家であることが後世の研究者
をあつめた。
 さらにシェークスピアとセルバンテスが「奇しくも同じ日に没した」
ことは、二大文豪を語る「殺し文句」となった。
 命日が、西暦一六一六年四月二十三日であれば、当時の英国教会はロ
ーマ教会との対立から旧来の《ユリウス暦》を保守していたが、スペイ
ンでは《グレゴリオ暦》を先に採用したために、同じ日付であっても
シェークスピアが長く生きたことになる。
 これを、邦暦順にならべると、元和二年の三月八日(土曜日)にセル
バンテスが、三月十八日(火曜日)にシェークスピア、さらに「奇しき
因縁」を拡大解釈するなら四月十七日(水曜日)徳川家康におよぶ。
 最後の《ユリウス暦》すなわち帝政期の《ロシア暦》に生涯を了えた
ツルゲーネフ( 18181028J=1109G 〜 18830822J=0903G )は、当然《グレ
ゴリオ暦》を熟知していた。
 ローマ教皇グレゴリウス十三世が、諸国から追求されて断行した《グ
レゴリオ暦》(布告 15820224 実施 15821005J=1015G ) は、一挙に普及
したものではなく、英米では百七十年後( 17520903J=0914G ) 、さらに
五十六年たって、ソビエト革命政府が採用( 19180201J=0214G ) してい
る。この間にフランス革命政府が秋分年初の《共和暦 17920911J=0922G
〜 18051219J=1231G 》を独自に開発したが、定着せず復帰した。
 日本も、外交的迎合から「徳川の正月」を廃し、明治五年十二月三日
( 18730101G )よくわからないまま太陽暦を導入した。《日本暦日原典》
の編著者・内田正男氏は二十数年後に書かれた《金色夜叉》を例に、つ
ぎのように証言している。
『来年の今月今夜のこの月を、再来年の今月今夜の……』と、お宮への
うらみをこめた貫一の有名なセリフは、旧暦でなければ通用しない。旧
暦であればこそ正月十七日の夜の月は、毎年ほぼ同じ形で地上を照らす
ことになるが、太陽暦ではいくら待っても、来年の今月今夜には月は出
てこない。(暦の会編《暦の百科事典》新人物往来社)
 この台詞は、読売新聞の連載になかったものを、市村座の初演から加
えられたとも伝えられる。観客や批評家に気づかれなかったとはいえ、
ひんぱんに自作を観劇した尾崎紅葉が「月令の矛盾」に苦慮していた気
配は小説からもうかがえる。
 
 暦に無頓着なのは日本人にかぎらない。
 ロシア生れのユダヤ系アメリカ人、博識の化学者にしてSF作家の、
アイザック・アシモフ( 19200102G 〜 )もセルバンテスとシェークスピ
アを「生前、名前すら知らない二人」「死亡した日が同じ」と安易に引
用している(星新一・編訳《アシモフの雑学コレクション》新潮文庫)。
 一六一一年に引退したシェークスピアはその翌年に英訳された《ドン
・キホーテ》の評判を聞かなかったのだろうか。
「内容的にまちがっていることはない」とショートショートの大家
( 19260906〜 )が追記するように、二千頁をこえる岩波の増補版《西洋

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04月23日(木)
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