ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
[1063967hit]

■ 生没年月日について 〜 増補第五版のまえに 〜
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19870426
 
 生没・不詳の時代 
 
 稗田阿礼(00000000〜00000000)は、 712年に完成した日本最古の書
《古事記》の暗唱者です。彼が仕えた天武天皇(06310000〜06860909)
はじめ、編集者の太安麻呂(00000000〜07230707)、これを命じた元明
天皇(06610000〜07211207)など、当時は支配階級の人たちさえ、生没
年月日の記録は不完全でした。
 同時代であることが分っていても、それぞれの年令差が特定できず、
青年か壮年か老年か、あるいは男性か女性かもしれず、彼らの人間的な
交流を想像することはできません。
 
 誕生日・不詳の恋
 
 シーザーやアントニーは、クレオパトラの誕生日を祝ったでしょうか。
 五十八才のカエサル(-102/-1000712〜-0440315)が暗殺された年、
愛妾クレオパトラ(-0690000〜-0300810)は十六才の小娘でした。二年
のちに女王となり、三十才の熟女となった彼女が「自害した」というデ
マを信じた五十二才のアントニウス(-0820000〜-0300000)は、早まっ
て失恋自殺しています。その直後、情熱的な女王の色じかけに乗じなか
ったのが、三十三才の冷静沈着な青年武将アウグストス(-0630923〜00
140819)でした。彼は、クレオパトラが毒蛇に乳房を噛ませるのを黙殺
し、七十七才まで延命します。
 劇作家シェークスピア(15640426〜16160423)も、こうした年令差を
よく調べないまま一連の史劇・悲劇を書きあげたのではないでしょうか。
 
 命日不詳・悲運の最期
 
 十三才の誕生日にプレゼントされた一冊の《日記帳》は、かくれ家の
前を通りすぎるナチスの靴音に、息をひそめて生きたユダヤ人少女の名
を永遠のものにしました──アンネ・フランク(19290612〜19450300)。
十六才の誕生日を迎えることなく、三月はじめの某日、収容所でチフス
のため病死した(!)と記録されています。
 命日不詳の人たちは、多く悲劇的・英雄的な最期をとげています。ナ
チス総統ヒトラー(18890420〜19450430?)の自殺を例外としても──。
 南極で凍死した探検家アムンゼン(18720716〜19280600)や、冒険家・
植村直己(19410212〜19840200)も、命日不詳です。
 
 三つの誕生日・ひとつの真実
 
 誕生日が二つもある例は、芸能人、とくに女性に多くみられます。
 本人が年令を詐称する場合だけでなく、誤植によって生じた可能性も
あります。本書はいずれが正しいかを究明することが目的ではなく、さ
まざまの資料(主として人名年鑑)に記載された日を集めたもので、も
ともと誕生日も命日も、本人自身が確認・申告できない点に、趣向を求
めています。
 靴のコレクションで「後宮5000足」と伝えられたマダム・イメルダは、
年月日それぞれ三とおりもの誕生日が収集されています。
 もし、0125説が真実なら、仇敵コラソン・アキノ(19330125〜)と同
じ日に誕生パーテを祝ったはずです。
 
 同日生れ? 二人の作家
 
 誕生日が偶然おなじ、という例は、決してめずらしくありませんが、
同年月日に生れ、同じ分野で後世に伝えられた例は、きわめて稀です。
旧暦が新暦に変る年に生れた、つぎの二人は、多くの資料をしばしば混
乱させています。
 二十四才で夭逝した女流作家・樋口一葉(18720325/0502〜18961123)
と、七十一才の文豪として大成した島崎藤村(18720217/0325〜194308
22)は二十二才の年に、対面しています。
──静かにかぞうれば、誠や此人とうとく成そめむるは、をととしのけ
ふよりなり、隔たりゆく月日のほどに、幾度こころのあらたまりけん。
一度は、これをしをりにして悟道に入らばやとおもひつる事もあり──。
 当時の一葉日記(0722)によると、彼女は、二年前から思いをよせて
いた師・半井桃水(18600000〜19260000)をあきらめ、藤村も尊敬する
先輩・北村透谷(18681116〜18940516)の縊死に衝撃をうけているので、
初対面の二人が、きさくに世間話を交わしたとは思われません。

[5]続きを読む

04月26日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る