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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 一聴一席E異国の楽の音 ジェラール・ショーム日仏学館長をたずねて
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19690904
── ことしはナポレオン生誕 200年というわけで フランスではさか
んなようですね
ショーム 伝記映画はじめ テレビ 新聞 出版など 商業的にもなか
なかさかんです 今日のフランスは ドゴールの失脚以来 精神的に
意気のあがらないときでもあり ナポレオンを思い出すのは 当然でし
ょうね たとえば ある雑誌では“ロシアに対するナポレオン”という
特集を組んでいます 大衆にわかりやすく紹介しているのですが現実の
政治との関連を重んじているのが一般的な傾向のようです
── 来年は 一つ若いベートーヴェンの 200年ですが 館長は音楽の
ご趣味はいかがでしょうか
ショーム 父がヴァイオリンを 母はピアノをやっていましたから小さ
い頃から聴くことには親しんでいます はじめはやはりベートーヴェン
やショパンなど ロマン派でしたね
── 演奏はなさらなかったのですか
ショーム ボーイ・スカウトの時にコーラスをやった程度です 学校が
カソリック系だったので グレゴリオ聖歌も少し学びました 17才の頃
に ラジオで 18世紀の音楽をあつめた番組があって 毎朝たのしみで
した
── シャンソンはいかがでしたか
ショーム 幼い頃から母がトレネの歌を口ずさんでいましたからね
ポピュラーな音楽も バッハと同じくらい好きですよ
── モダン・ジャズではマイルス・デビスが映画音楽の分野でフラン
スならではの活躍をしましたね
ショーム そう アメリカの音楽に熱中した時代もありました 大学生
の頃 ジョリベやメシアンの演奏に接して感動したのをおぼえています
── フランスでは さまざまの音楽が同居していますが 好ききらい
は人によってはっきりしているのでしょうか
ショーム 私自身の好ききらいをいえば モーツアルトを最後に それ
以後のオペラ作品は好きではありません 旋律が気にいらないわけです
いや ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》を除いてはね(笑)
── 近代音楽の開幕市場として パリにおける初演の記録は数えきれ
ないのですが 現代の前衛的な音楽も 相かわらず さかんでしょうね
ショーム いや 一般の演奏会でのプログラムは保守的なものばかりで
せいぜいプロコフィエフ ショスタコーヴィッチ ストラビンスキーと
いったところです 新しい音楽は主としてラジオ番組によって 少数の
支持者を確保しているにすぎません 新しいものを理解する人たちは
常に少数なのでしょうね
── 日本の現代音楽作品の多くは ある意味で民族的な要素と不可分
の関係にあるのですが
ショーム そう タケミツ(武満 徹)の音楽などですね 私は日本へ
来る前は チュニジアやベトナムにいたのですが そこでは伝統的な様
式が守られていて その様式のままで現代的なものを創りだそうと試み
たりするので できあがったものは まったくつまらない(笑)むしろ
私は日本の音楽の中では ガガクやブンラクに興味をもつのです それ
も最初のうちは まるで判らないけれども 何度も聴いているうちに
ある共通したものを感じるようになった しかしこれらの音階や台詞の
複雑なことは いずれも ウウ・ウー・ウーッ(笑)なんていう調子だ
から 私のように興味をもった者でも とてもおもしろい というとこ
ろまでには およびませんね
── どんどん外国に紹介さえしておれば やがて国際的に脚光をあび
るというのは 安易な楽観にすぎないようですね
ショーム ヨーガク・ホーガクというふうに区別しているようですが
タケミツのように 両方をうまく融合していけば 可能性はあるでしょ
う しかし ヘイケ物語による琵琶語りとか謡曲のようなものは 音楽
だけをとりだして ヨーロッパ人に理解させようとしても困難でしょう
ね ブンラクにしても 三味線だけで訴えるとすれば 退屈なものでし
かない ドラマチックな台詞と音楽が密接に一体化しているからです
── イベット・ジローが 日本語でシャンソンを歌っていたように
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09月04日(木)
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