ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
[1058353hit]

■ Never too late ! 〜 セミプロ・プロ・アマ 〜

┌─────────┐

│ adlib/19560606

│ http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=19560606
│ http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/list?id=87518&pg=000000
│ https://tx696ditjpdl.blog.fc2.com/?q=00000000

│ https://awalibrary.blog.ss-blog.jp/
│ https://booklog.jp/users/awalibrary/
│ https://q.hatena.ne.jp/adlib/

│ https://twilog.org/awalibrary
│ https://twitter.com/awalibrary
│ https://www.facebook.com/masatoshi.awa

└─────────┘

 
 Never too late ! 〜 セミプロ・プロ・アマ 〜
https://tx696ditjpdl.blog.fc2.com/blog-entry-3324.html
 あまちゅあの椅子 〜 第一のチェロ 〜
 
 “アマチュアの椅子”ということばが浮かんだのは、いつ頃のことだ
ったろうか。たとえば、高価なコンサートに出かけて、空いている席が
あったので「ここ空いておりますか」とたずねる感じ、尋ねられた人は、
あるいは高名な音楽評論家かもしれない。ひょっとすると、今日のコン
サートの主役と、日頃ライバル意識を燃している人かもしれない。
 そしてあたりは御親族・知人・友人ばかり、そんな真只中でおずおず
指さして「ここ空いておりますか」などとたずねている自分の姿を、最
近非常に意識するようになった。
 ああそうか、アマチュアの椅子”とはアマチュアの“チェア(椅子)”
に通じるでたらめなゴロ合わせだったのか、とひとりでに気がついて、
苦笑したのはつい先刻であった。
 つまり、私はアマチュアの音楽愛好家である。私は、他に文学とか映
画とか、美術とか、およそ“芸術的”なことには絶えずあこがれと好奇
心をもつ、ひとりの市民である。それらをよりよく見たり聴いたりする
ためには、前に空席があれば移りたいと思う。そしていう、「ここ空い
ておりますか」
 
 重ねていう、わたしは高名な音楽評論家とも、名演奏家たちとも今日
までつき合いがなかったし、どこかのレコード店で、毎月大量に買物を
したり、雑誌に載るようなでかいステレオをもっている大型消費者でも
ない。
 さらにいえば、毎朝音楽を、それもバッハとかウェーベルンを味噌汁
と同じように日程に組んでいる程のマニアでもない。具体的にいえば、
数年来レコードを買ったこともなければ、コンサートに出かけたことも
ない。アマチュアにも格づけが必要で、たとえば出席率のようなものが
あるとすれば、まずアマチュアの座もおぼつかない、そんな奴が「ここ
空いておりますか」というのは生意気なことだろうか。
 だが私はそれでも、もっとよく聴きたいから、そこに坐りたい、今こ
そそこに坐って、本気になって聴いてみたいのだ。音楽には、私の青春
をあずけておいた筈だ。私の青春は音楽とともに在った。私の青春は過
ぎてしまったけれども、音楽はたぶん変っていない筈だ。
 念のためにつけ加えると、私は老人ではない。
 いわゆる中年でもない。髪を短く刈り上げた見かけ通りの青年である。
そして既に少年ではない。私のいう青春は少年から青年への過渡期に当
る、たった数年間、数十ヶ月のことだ。
 
 あれから、もう十年以上経ってしまった。十四年前に、私はチェロを
買ってもらった。おふくろをまるで脅迫したような勢いで、チェロを手
にした。楽器店から家まで(ケースがないので)裸のままかついで帰っ
た。家に帰ってなでたりさすったりした。はじくと胸にこたえる響きが
した。とても一度に調弦して弓でこすってみようなどとは思わなかった。

 ついに自分のものになった感激で腰をおろしてしまっていた。F字孔
からのぞいて、中の貼紙の文字を読んだ。腹ばいになって、狭い穴から
のぞけるだけのぞいた。すると、魂柱が倒れているのに気がついた。
 大変だ、と思った。これは少年の考えである。誰のせいでもない、自
分そのものが傷ついている、という気持だった。数十分というものどう
していいか判らなかった。

[5]続きを読む

06月06日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る