ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
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■ 旅のしおり 〜 余太郎の出処進退 〜
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19540427
 
 なにやら毎日がいそがしい。いつものようにセカセカ歩いていると、
図書委員の吉田肇君に呼びとめられた。
「河原が、お前のこと探しとったぞ」
「そうか、図書室かな。いますぐ行くわ」
「お前、いそがしそうに歩いてたけど、別に行くとこなかったんやろ」
 ゴリの皮肉は相当しんらつだが、ときに図星のこともある。
「こんど、地歴部でね」河原満夫君は、おだやかに用件をきりだす。
(河原とゴリが、どうして仲良しなのか、ふしぎでならない)
「修学旅行のしおり、というパンフレットをつくる。協力してくれんか」
「協力してもええけど、なんで地歴部が出すんや」
「なんでか、恒例になってるらしい」
「ガリ版は、ここちょっといそがしいから無理や」
「印刷は、専門の人にたのんだらええ。編集のしごとを、まず君が中心
になってもらいたい。ぼくら地歴部員がそれを手伝う」
「なんや話がアベコベみたいやな、君は地歴部長になるんやろ」
「ぼくは、しろうとやからね。編集は、きみのほうがくろうとや」
 彼の悠揚せまらぬおだてに乗って、最初の編集会議に出ると、
「なんで、アワがここに居るねん?」
と寺尾宇一郎君が異議を申したてるので、議長役の河原が説明する。
「彼に、編集のリーダーをやってもらいたいと思う」
「おい河原、それは議長の独断やないか」
「いや、みんなも賛成してくれる思うとったんや」
「俺は反対や、地歴部のしごとを新聞部にたのむのは気にいらん」
「わかった、おれは参加しない。河原に手伝うてくれいわれたけども、
修学旅行のしおりは、たしかに地歴部だけでできるはずや」
 翌日、高島春江(国語)先生に呼びとめられた。
「アワくん、やりよし。地歴部の子だけやない、センセも賛成や。遠慮
せんと、やりよし。立派な本ができたら、ほかの生徒もよろこびはる」
「ほんなら、やります。修学旅行は、みんなが行くもんや」
 寺尾君に会って、
「やっぱり、おれにやらしてくれんか」というと、
「やったらええがな。俺はな、実は修学旅行には行けへんかもしれん」
「なんでや」
「盲腸の可能性がある、いわれたんや。医者は行ってもええ、いうのに
先生がアカンいいよるねん。これ、サカサマやったら行けるのになあ」
「そうか、旅先で入院したら、先生も困るやろな」
「そやから、旅のしおりは、俺のかわりに君が地歴部に入って、やって
くれ。俺は、行けもせん旅行のしおりなんか、つくる気にならん」
 
 こういうわけで、彼の名は、目次にも編集後記にも記されていない。
 いま思えば、彼に編集だけでも参加させるべきだった。
 

 
 旅のしおり
 
 表紙        ……………………………………… 3C 阿波 雅敏  -8
 目次        ……………………………………………………………… -7
 讃美歌 十一番/二二四番/二六二番/二八八番/四五七番/頌栄五六八番 -6
 とびら       ……………………………………………………………… -2
 旅程表       ……………………………………………………………… -1
 関東旅行 地図   ………………………… 3D 平井 文人/竹田 幸弘  0
 東海道汽車の旅   ………………………………………  3C 大浦 猛   1
 短歌        若山 牧水 ………………… 解説 3C 河原 満夫  7
 富士山と富士五湖  …………………………… 3C 細井 武/上尾 豊三  8
 詩         金子 光晴 ………………………………………………  11
 富士・富士五湖附近 地図 ……………………………………………………… 14
 箱根        ……………………… 3A 長谷川 雄一/埴田 智   17
 箱根国立公園附近  地図 ……………………………………………………… 21
 江ノ島・鎌倉    …………  3B 遊津 寿子/星野 栄子/中谷 曜子  22
 東京        ……  3C 祖父江 重剛/笠原 信男/上田 魏二郎  26

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04月27日(火)
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