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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 山びこ学校
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19511030
 
 19511030             from 金谷 常延
 
 御手紙に添えて写真、学級新聞ありがとう。早速先生に持ってゆきま
したら非常に喜んでいました。
 早速 御礼を云はねばならないのに ついこんなに遅くなって了って
相済まぬことだと思ひます。先生は大学病院北病舎二階へ入院しました。
当分絶対安静で身体は動かせないのですが、しゃべるのは差支ないよう
です。勿論 悪化したから入院したのではなくて 先生の例の合理的な
療法を徹底してやってもらふことを実現したのに過ぎませんから 決し
て御心配の無きよう 六年生の皆さんにもよくこのことは御伝え下さい。
しかも入院してかえって 全治可能の希望が十中八九まで持つことが出
来るようになったのも収穫でした。しかし二学期は恐らく駄目でせう。
私たちとて せめて三学期はという気持で一生懸命ですが、病気が病気
なので(薬では決して治らないそうです)自分の体力と回復を待つより
外がありません。
 学級新聞のこと 感想を先生から君に言って呉れるように頼まれたの
で一寸書きませう。またくわしいことは後日 暇なときに遊びによって
下さったら話し合って見たいと思ひます。
 折角張切っていたのに壁新聞になって悲観しているようですね。常に
多数が正しいという事はないわけで、小数意見が正しい場もあるのです
から悲観しないで下さい。紙の問題と材料(謄写版ヤスリ)との点から
いえば 壁新聞がいいでせう。しかし壁新聞にも欠点はあります。プリ
ントだけの分量を壁新聞に納めることは(今書いている位いの大きさで
あれば別ですが)町に貼ってあるようなのだと とても大変ですね。筆
で書くというのも大変でせう。立読みということも(持って歩いていつ
でもとり出してよめない)、とにかく方法は皆さんで考えて いゝのを
作ってください。
 プリントの技倆については君位いに書ける人はそう居ないと思ひます
(大人でも)立派です。少し太い字の研究さえ出来れば満点でせう。
編集、これは君のひとり角力みたいで、とても大変ですね。もっともっ
と皆んなが発表意欲をもたなくてはいけないし、学級新聞としての意義
も薄らぎますね。皆さんが 山びこ学校の生徒たちのように もりもり
自分の意見を発表する機会と訓練を努力すべきでせうね。
 どうでせう 壁新聞になった機会に その方に 皆んなが力を入れる
ように話合うことに努力しては…… プリントは それからでもいゝの
ではないでせうか。君の特技を示す機会は一応押えて、内容を充実する
ための努力をやって見ては……。 そのことの方が、皆んながよくなる
いちばん大切なことだと思うのですが。 
 この間、国語主任をやって居られる岸本先生が先生のところへ山びこ
学校の本を見たまえといって御見舞に来られました。あれはとてもいゝ
本です。
 岸本先生は新洞校のような環境を持っている子供たちこそ ほんとう
に詩が必要だということを云はれ 実際にも教育して居られるようです
が、詩は勿論うたですが 汚れのない童心にうつったまゝのものを真直
に偽りなく見て、感じて、表現することが大切なことなので、そういう
態度を常に持っていることは 自分自身でものを見て、感じとって、表
現する力がつくわけで、自分の意見を持つ一番根本的なものだと 私は
思ひます。私の家は岸本先生が貸して下さった山びこ学校があります。
先生も読んで終いましたので返さねばなりません。
 君がもしその返し役を引受けて下さるのでしたら その機会に岸本先
生と話しすることも出来ると思ひますし どうでせう。勿論こんなこと
は君自身はよく解っていることだろうとは思うのですが、私が見せてい
ただいたプリントとの編集ぶりから憶測して「あの本をもっと読めば」
という気持、それから「先生とお話しすること」が決して無駄でないこ
とが確信されるのです。そしてそのことが君の性格 ひいてはこれから
の有為な人生をあゆんでゆく上にもぜひ必要であろうということを──

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10月30日(火)
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