ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
[1062338hit]
■ カツシン一代 〜 Infamy is better than obscurity 〜
…… 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間
をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する。老化に身を任せな
がら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは
「本」。
i
【興味】ポイント
(1)86歳になるまで本はかけがえのない存在だった
(2)不思議だが本を読みたいと思わなくなってしまった
(3)この世に対する興味が減ってきているのが理由かも
戦中戦後の本のない時代の後、初めて手にした本は「むっつり右門」
が活躍する『右門捕物帖』とやはり捕物帳の『銭形平次捕物控』でした。
小学5、6年生の頃です。楽しくて、楽しくて、夢中で読んだ記憶がいま
も鮮やかに蘇ってきます。
次いで高校時代。戦後、ようやく刊行された『世界文学全集』を予約
するために池袋駅の東口にあった新栄堂書店の前に並びました。さらに
高校時代で覚えているのが『坊っちゃん』『三四郎』『吾輩は猫である』
などの夏目漱石の作品です。『三四郎』が特に好きで、何回も読みまし
た。そして、本郷界隈や東京大学へのあこがれを持つようになりました。
これはずっと後になりますが、都立駒込病院に勤務していた頃、ハワイ
に出張して、観光に興味がなかったので、ホテルのベッドに居座り、限
りなく広がる青空をバックに漱石の『虞美人草』を読みました。とても
いい思い出です。
昨年、閉館になった九段下のホテルグランドパレスを30年以上にわたっ
て東京での定宿にしていて、日曜日の午後3時にチェックアウトすると、
神田神保町の東京堂書店に直行、店内を1、2時間徘徊しゆっくり本を見
ました。そのうえで買い求めた2、3冊をかかえて、近くの揚子江菜館に
行き、生ビールを飲むのを無上の楽しみにしていました。
今でも、病院の居室は本であふれています。いろいろな方が本を送っ
てきてくれるので、増え続けています。
ii
そんな具合に本に囲まれる生活が、自分にとって心地よかったのです。
たぶん5、6歳で本を手にするようになって、86歳になるまでの80年間、
本は私にとって、かけがえのないパートナーでした。ところが、最近、
それが変わってきてしまったのです。
ホテルグランドパレスがなくなって、神田神保町に足を運ぶことがな
くなりました。あれだけ好きだった東京堂書店には、まるで行かなくな
りました。でもそれが気にならないのです。
自分でも不思議なのですが、本を読みたいと思わなくなってしまった
のです。まず、小説をまったく読まなくなりました。少しもおもしろく
ないのです。そのほかの本も、原稿を書くのに必要な時以外は手にしま
せん。
そうなった理由のひとつに老眼の進行があるかもしれません。今の老
眼鏡では文字が読みづらくなってしまったのです。そこで、近く老眼鏡
を新しくします。しかし、これで本がまた好きになるかというと、あま
り期待していません。
最近、あの世への興味が高まって、この世に対する興味が減ってきて
いるのです。それが、本に関心がなくなってきた一番の理由ではないか
と思っています。あの世でのベストセラーでも手に入ればいいのですが
(笑)。
《週刊朝日 20221028》
┌┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┐
↓=Non-display>
10月24日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る