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与太郎文庫
by 与太郎
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■ froufrou 陛下おきものでおくつろぎください
── 桂 米朝《永 六輔、小沢 昭一は昔からおしゃべり 2005-05-07》
http://radiolife.exblog.jp/1712153/
(Photo:Awa, Masatoshi)
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もう一つ私の気に入ったのは、こんなに絹の羽織や、袴や、裃が集ま
っていて、その中に一つもどぎつい鮮明な色がないことであった。赤も
黄も線も原色のままのは一つもなくて、すべてがその二色、三色の混和
色の和やかな軟い色調である。日本人を原色の羽色をしたオウムか何か
のように、描いている絵画は信用できないのである。ここでは下層民の
服装でも、私がシンガポールのある農園で見てきた老若男女の群とは違
っている。あちらでは、マライ人やインド人の派手な衣服の入り乱れて
いるのに庄倒されて、博物学研究室の鳥の標本のようだと思った。
ここでは下層民の群衆を見て、第一に目につくのは、前にも云ったよ
うに裸体であって、その次に多いのは単色であるが、鮮明な色ではなく
て、多くは青である。他の上層階級の衣服には、あらゆる混和色が用い
られているが、その選択はすこぶる厳格かつ趣味的である。
削りあげた頭や、とろんとした眼差や、出歯などを見ないで、服装だ
けを見ていると、自分がどこに居るかを忘れ、極東ではなくて、極西に
居るのではないかと思う。盛装の色調は、ヨーロッパ婦人のそれと同じ
である。私は、老人が花模様緞子の袴をはいているのを五人ばかり見た
が、これもくすんだ色であった。あとの者は、単色の灰色の袴や、ねず
み色の袴の者もあり、又くすんだ青色、アデライデ(好みの色)、ダー
ク・グリーン、りんご色の緑など、一口にいうと最新の流行色(couleurs
fantaisie:ほしいままの色)が全部そろっていた。
奉行(大沢豊後守)は、黒の細縞の入った同じ紫色(pensee)の長着
と袴をつけていた。奉行の上衣(マンチラ)は他の者と仕立が違ってい
た。皆の者は背も袖も滑らかで、袖は手首のところも広く、全体がわが
国(帝政ロシア)の婦人マントに似ている。奉行のは脇の辺で袖が切り
落してあった。それから、小さな翼のような付け足しが出ている。あと
で知ったことだが、これはわが国の通常礼装に相当する略式礼服である。
だが、こんなに私が日本の流行論を一席やろうなどとは、自分でも考え
たこともなかったし、諸君も、おそらく想像もされなかったろう。
(125〜127p)
十月七日(陰暦九月十六日)は、我々のクロンシタット出発以来満一
年である。(18531007)
私は、ついに日本の婦人を見た。男子と同じ袴で、咽喉をつつむ上衣
を着て、頭だけが剃ってない。立派な身なりの婦人は、ピンで後から髪
をとめている。みんな色黒で、たいへん見苦しい! 日本の婦人は大胆
な仕草をするそうだが、私は知らない。見たこともない。また日本婦人
の評判を汚したくもない。近頃は、この日本婦人が、たくさん艦の周囲
を乗り回している。みんな不美人で歯が黒い。その多くが大胆にこちら
を見て、笑うのだ。しかし、いくらか美しくて、立派な着物を着た女達
は、扇子で顔をおおうのである。(149p)
── ゴンチャロフ・著/井上 満・訳《日本渡航記
〜 プレガート『パラルダ号』より 〜 1941‥‥ 岩波文庫(初版)》
04月09日(月)
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