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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 《AT 19660128 edited by Awa Library 》
これは、交換財としては重過ぎる。/ゆえに、現代社会では交換財とし
て、あまり有効ではなくなった。そのため、レヴィ=ストロースは、女
性の交換財としての役割を、未開社会において、あえて「発見」しなく
てはならなかったのである。/言葉が脳の機能であることについては、
よほどの臍曲がりでない限り認めるであろうが、お金はどうか。お金に
まつわる全ては、じつはヒトの作り出した約束事である。私の給与とは、
誰が決めたか知らないが、いまでは銀行の計算機に記された数字である。
これが脳の機能でなくて何であろうか。(P022-023)
(略)
ヒトは「ロケットと同じ原理」で直立している。落語家の桂枝雀はそ
ういう仮説を立てた。前に倒れそうになると、息を吐く。後に倒れそう
になると、あわてて息を吸い込む。ある男が、この「仮説」を実証しよ
うとした。証明のために、しばらく息を止めて立っていた。やがてこの
男は、たしかにバッタリ倒れた。「実証」とはしばしばこういうもので
ある。もちろん、かつてヒトは、実証され得ない観念を振り廻し、他人
に多大の迷惑をかけた。歴史はそういう教訓に満ちている。それを過ち
だと考えるか。それともヒトとは「そういうものだ」と考えるか。私は
後者である。
── 養老 孟司《唯脳論 19890925 青土社》P026
01月28日(金)
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