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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 記憶の素性 〜 feature of memory 〜
 飢えをしのぐために人肉を食べると言う話は「野火」などでも出てく
るし、古参兵による新兵いじめは幾度となく描かれてきたものだが実際
にもそのようなことはあったに違いない。
 特に人肉を食べる場面は衝撃的で、肉の調達を疑った男も殺害して、
その男の尻の肉を食べたと言うのだ。
 人が人を殺してその肉を食うと言うおぞましい行為なのだが、飢えに
苦しむ戦場ではそのような行為もできてしまうのかもしれない。
 人間としての尊厳をなくしてしまうのが戦場なのだろう。
 
 銃撃を受けるシーンなどはあるが砲弾が飛び交うようなシーンはない。
 当時のスチール写真を使っての描き方はドキュメンタリーを意識させ、
起きていることの信憑性を高めている。
 心に響くのは大橋が言った「遺族の意に添うように処理してやればい
いのに」という言葉、あるいは「A級戦犯が総理大臣になっているのに、
後始末は我々下っ端が負わされている」という言葉である。
富樫も間違いなく戦争の犠牲者なのだ。
 国家によって引き起こされた戦争の犠牲者及びその遺族は国家によっ
て救われて当然だと思う。
本当のことを語っているように見える証言者も、どこかで自分をかばっ
ているような所があり、そのことが次々と暴かれていく後半はサスペン
スとしても盛り上がりを見せていく。
 千田部隊長(中村 翫右衛門)は憎まれるべき存在だが、彼がサキエ
に語った内容が最後の衝撃となる。
 サキエはその事実を再確認するが、そのことで富樫の名誉が回復され
たわけではない。
 サキエが最後につぶやく言葉がむなしい。
 戦場で起きる想像を絶するような行為と共に、終戦が成っているにも
かかわらず処刑が行われるという軍隊組織の不条理が恐ろしい。
 僕たちはそのようなことを経験しないできた戦争を知らない世代であ
る。
 それは幸せなことでもあるのだが、ひとたび戦争を引き起こせばこの
ような悲惨な出来事も起きてしまうのだと言うことを心に留め置かねば
ならない。
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06月08日(火)
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