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与太郎文庫
by 与太郎
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■ カエサルに返せ
 そして「税金をローマに納めるべきかどうか」と聞かせた。
 当時ユダヤはローマ人の支配下にあったから、「税金を納めないでよ
い」といえば、ローマに対する反逆として訴え、「税金を納めよ」とい
えば、独立を欲しているユダヤ人民衆の気持から、イエスを離反させう
ると思ったのだった。
 しかし、イエスは、この相手のワナに気づいて、間接的にたくみに答
えた。
「貨幣についている肖像は誰のか」
「カイザル(ローマ皇帝)の像です」
「それでは、それはカイザルのものだから、カイザルに返したらよい。
神のものは神に返しなさい」(『マタイ伝』二二章、『ルカ伝』二〇章)
── 《故事名言・由来・ことわざ総解説 19770910 自由国民社》P168
 
■2002/07/23 (火) 架空の風貌(2)
 
 実はこの貨幣に刻まれたカエサルは、皇帝を名乗る前(紀元前44年)
に暗殺されているので、直接本人に返すことはできない。したがって、
神に返すことと同様に(キリストの得意とする)比喩的表現である。
 当時ローマの支配者は“アウグストゥス”の尊称で呼ばれた、事実上
の初代皇帝(妹の孫)オクタビアヌスである。カエサルの姓は、六代目
“暴君ネロ”まで襲名されるが、十二人まで総称して“カエサルたち”
と呼ぶ例(SuetoniusGaius《De Vita Caesarum》)もある。
(のちにドイツのカイザル、ロシアでツァーの称号として用いられた)
 なお、新約聖書のキリスト言行録は、ローマの公式記録に見あたらず、
旧約聖書のモーゼも、エジプトの記録には一切登場しないという。両者
の実在を証明する史料はないが、すべてを虚偽の史実と断定することも
不可能なのである。
 奇妙なことに、イスラム教祖マホメットの実在を疑う者はいないが、
偶像崇拝を排除するため、一切の肖像が認められないので、その風貌に
関するイメージが存在しない。このことは、同時にキリストやモーゼの
風貌が、まったく根拠のない空想にもとづいていることを、期せずして
非難しているのである。
 

07月01日(月)
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