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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 空の夢 〜 気球とボート 〜
一つは眠りの継続。早起きして会社に行かなければならないが、脳は
眠り続けたい。こんな時に人は「既に仕事をしている夢」を見る。二つ
目は起きてから人を安心させる働きだ。「試験で苦しむ夢」から覚める
と、私たちはああ良かったと胸をなでおろし、現状を肯定できる。
三つ目は、自分自身の存在が肯定されていた子供時代に戻ること。こ
れは「自分の生存は意味がないことではない」と自分に納得させる働き
がある、という。ただ、自分が成人として登場したり、記憶が子供の言
語に置き換えられて出現するため、とっぴな夢にもなる。そして四つ目
は、災害などの困難に直面した時、「これは現実ではない。夢だ」と思
うことで、脳にかかる生理学的な負担やストレスを軽減する働きだとい
う。
「この世は夢に過ぎない、という考えは世界に広く見られる。この世
が夢なら、“現実”のあの世もあるはず。死ぬのは怖いが、あの世があ
るなら恐怖は薄れるでしょう」と新宮教授。
また、夢の中では突拍子もないことが起きたり空を飛べたりもする。
そんな夢のストーリーや夢に出てくる物には意味はあるのだろうか。
空を飛ぶ夢や火事の夢など、多くの人が見る夢をフロイトは「類型夢」
と呼んだ。新宮教授は「類型夢は、誰もが経験する幼いころの経験がベー
スになっている。現在の生活でその経験を参照する必要が生じると、夢
に出てくる」と説明する。
例えば「空を飛ぶこと」は、精神分析では「初めて言語を獲得した時
の全能感」を象徴していると考えられている。進学や転職など、新しい
環境や課題に直面する時に飛ぶ夢は現れ、「かつて言葉を覚えたように、
今度もできるよ」とメッセージを送ってくれるのだ。それでも最後に落
ちる夢を見る人が多いのは「飛び続けていると、死者の仲間入りをする
ような不安が芽生えてくるからではないか」と新宮教授は言う。
また、教授は「私たちは夢に予知能力を期待しがちだが、むしろその
時々の気掛かりとその解決が、夢でえん曲に表現されると考えた方がよ
い。夢は、夢を見る人の過去の記憶、現在の状態、そして『空を飛ぶこ
と』のようないくつかの象徴で構成されており、夢を見た人と、それを
聞く人の会話によって意味を見いだすことができる。夢を見た人が自ら
語ることで、その夢の意味を生み出すと言ってもいい」と付け加えた。
夢の不思議は、奥が深いようだ。
── 《毎日新聞 20041111 東京夕刊》<イラスト・平山義孝>
03月20日(火)
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