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与太郎文庫
by 与太郎
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■ くたばれ!たかじん(2)
    そんなカッコ悪いことするか(昨日の売り上げを忘れるために
    夜中ひとりで弾いたかもしれんケド)誰にも聴かせなんだゾ。
    タカじんの店で独奏したのは、バッハの《無伴奏チェロ組曲》
    の断片だ。あの店は、わけあって客筋がよすぎる。タカじんの
    下手な歌とギターだけでは悪酔いして、マスターの品位にも傷
    がつくのではないか。そこで楽器を預けておいた。ここいう時
    さりげなくチェロをとりよせ、悠然と弾きはじめる。どや格調
    たかいやろ。
ざこば それて、クラシックかいな。
 阿波 さようでござる。一度は歌ったこともある。桂ざこばでも知っ
    ている《瀬戸の花嫁》でござる。これなど、タカじんの結婚後
    まもなく「店内のど自慢大会」開催にあたって、審査委員長と
    して手本を示しながら、またタカじんの花嫁への応援歌として
    聴かせたものだ。もうひとりの花嫁はマスターの妻・良子ママ
    だった。当時マイクを恐れていた客たちは、はじめて棒を手に
    した猿のように、たがいに奪い合うようになった。その数年後
    カラオケ・ブームに火を点けたのは、ボクの責任でもある。
ざこば アンタは、懐かしい話して気分ええやろけど、ワシャ帰るで。
 阿波 もうひとつだけ、言い残したことがある。ざこば師匠に、ぜひ
    キレテもらいたいのだ。かならずや師匠もキレル!
ざこば ほなら、これ最後やで。言うてみ。
 阿波 ようしらんが「やしきたかじんファンクラブ」があるとせい、
    一人前の紳士としてのファン・ゼロ号がボクとすれば、佐々木
    オーナーはファン第一号ちゃうか。はじめて「ジンちゃん」と
    呼んでくれた良子ママこそはゴッド・マザー、のちの中年女性
    ファン代表、イヤ待て象徴か“名誉総裁”やないか。赤十字の
    名誉総裁、知っとるか? 畏れおおくも美智子皇后であらせら
    れるぞ、タカじん聞いとるか、控えろ頭が高い。その名誉総裁
    夫妻に対して、なんと最初のコンサート以来十数年もの間に、
    いっぺんもキップを届けとらんそうやないか。しかもマスター
    に再会した時、なんとかならんか言われて、しぶしぶ手配した
    ちゅうやないか。コラ、聞いとるか!
ざこば テレビやないんやから、聞いとるかいな。
 阿波 ウルサイ、俺はもうキレそうになっとるぞ、なぁザコバ。
ざこば そらまあ、むかし世話になった人は、大事にせないかん。
 阿波 おまけに夫妻が花束もって楽屋にあらわれたちゅうやないか。
    ええかげんにせえよ、アベコベやないか。お前が花束もって、
    ステージ降りてあいさつせいで何しとるねん。なにがチケット
    じゃ、ケチケチしやがって。ケチットちゃうぞ。名誉総裁夫妻
    がチケットなかったら入れんのか、皇后陛下キップ買うんか。
    お前のコンサートにロイヤル・ボックス無いやろ、ロイヤル・
    シートも無いんか? ほんなら毎回チケット送らんかい、なめ
    たらあかんぞ! さぁザコバ。言うたれ、キレたれ。
ざこば よっしゃ「チケット出さんかい」
 阿波 そや、もっと言うたれ。しぶしぶ出すな、それいけ。
ざこば 「あとから出して、どないすんねん」
              〜(収録年月日不詳・放映年月日未定)
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〜 底本=やしきたかじん《たかじん胸いっぱい 19930620 KK ベストセラーズ》
 
 良子ママの回想「最後に片方のドアが無くなっても、そのまま走って
たのよ。よっぽど気に入ってたのね」(Tel'19990908)

06月07日(金)
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