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与太郎文庫
by 与太郎
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■ やしき・たかじん胸いっぱい
「給料くれないんですよ。あの喫茶店やめてもええですか。たまには大
学へも行かんとダメですしねえ」
「困ったなあ。あいつらしいなあ、アハハ」
(アハハはないでしょ、佐々木さん)
 それでも結局は佐々木さんのアハハ≠ノ負けてしまって、ぼくは翌
日もバイトに行った。
 この頃、ぼくは龍谷大学の一応学生であった(龍谷大学には六年間籍
があった。もっとも通ったのは二、三か月だけだったが。ちょうど学生
運動で大学が封鎖になった頃で、行くにも行けない状態だった。封鎖に
なってなくても行く気はなかったけど)
 喫茶店に行くと、Kさんがぼくを店の裏手に呼んで、
「悪いねえ給料払えなくて……客が来ないんでね。払いたくても払えな
いんだよ」
 そんなこと言われても知らんがな。ぼくは思わずムッとした顔になっ
た。
「そのかわりと言ってはなんだけど、君に車を一台あげるよ。それで勘
弁してよ」 運転免許は持っていたけれど車がなかったぼくは、二つ返
事で納得した。
 その車というのがスバル360、結構やないですか。給料がわりにし
ては上出来やがな。その話を佐々木さんに報告すると、
「そうか、車くれたか……ええなあ。アハハ」
 ところがこれが結構なアハハ≠ナはなかった。
 この車、二日に一度、オイルがすべてなくなり、ささやかな生活費さ
えも猛スピードで追い抜いてしまうほどのフラフラな車だった。
 そんなことがあってからまもなく、ついに佐々木さんの店も閉店にな
ってしまった。
 しかし、ぼくにとっては佐々木さんのハンバーガーショップ兼レスト
ランは仕事の原点≠ナあったし、女房(のちに離婚したが)と出会っ
たのもこの店だったのだ。
 

06月20日(日)
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