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与太郎文庫
by 与太郎
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■ セミコロン 〜 semicolon 〜
て」使用されることに。しかし、この曖昧さは時として、人の命すら奪っ
てしまう。なにを大げさな、と思われるかもしれないが、実際に法律文
のセミコロンの解釈の仕方が終身刑か死刑かの分かれ道になった裁判が
あると知って、仰天した。厳密なはずの法律文であろうと、必ず「解釈
の余地」が生まれる。この解釈の余地に入りこむ偏見について、著者が
鋭く切りこむ箇所は、本書の第一のクライマックスでもある。
一方、曖昧さを愛する文学の場では、様々な作家が様々な用法でセミ
コロンを使う。レイモンド・チャンドラーのエッセイで、「(判事が法
廷で使う)小槌のように勢いよく打ち込まれ」るセミコロン。ウェルシュ
の『トレインスポッティング』の「ギラつくような写実性」を生むセミ
コロン。メルヴィルは『白鯨』でセミコロンをなんと4000回以上使い、
長い物語に「関節」を作り、「自由な動き」を可能にした。
中でも、キング牧師のセミコロンの使用法を「1963年のアメリカにお
ける黒人の生々しい経験に通じる窓を開くものだ」とする指摘は胸に迫
る。牧師の実際の文章が引用されているので、ぜひその効果を実感して
ほしい。
最初に、曖昧さは嫌われると書いたが、なぜだろう。私は翻訳家だが、
翻訳の仕事をしていると、自分は作者の意図を正しく「解釈」している
だろうか、そして読者は、その「解釈」を理解してくれるだろうかと常
に考えてしまう。だが、当然、解釈がまったく同じになることなどあり
えず、そこには曖昧さが残る。しかし、その曖昧さこそが、相手に本気
でわかってもらおうとし、相手の話に真剣に耳を傾けることができれば、
魅力となるのだ。セミコロンの使用法、ひいては言葉でのコミュニケー
ションにおける「寛容で親切な心」の大切さを説く箇所が、本書の第二
のクライマックスなのだ。
Watson, Cecelia /現在、バード大学の訪問研究員。シカゴ大学にて
哲学修士、科学概念・科学史博士。マックス・プランク科学史研究所
の研究員やベルリンの芸術センター「世界文化の家 Haus der Kulturen
der Welt)で科学コンサルタントの経験を持つ。
── エリー・ウィリアムズ⦅噓つきのための辞書⦆
♀三辺 律子/20231019号 週刊文春
Sanbe, Ritsuko 1968‥‥ 東京 /英米文学翻訳家。
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〔Quora〕
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. 文才や、面白い/読みたくなる/読みやすい文章を書く能力って、文章
を読んだ量やそれを吸収する力、読むターゲット層に刺さる文章を書く
力みたいなものですか?
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https://jp.quora.com/%E6%96%87%E6%89%8D%E3%82%84-%E9%9D%A2%E7%99%BD%E3%81%84-%E8%AA%AD%E3%81%BF%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B-%E8%AA%AD%E3%81%BF%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E6%96%87%E7%AB%A0%E3%82%92%E6%9B%B8%E3%81%8F%E8%83%BD?__filter__=all&__nsrc__=notif_page&__sncid__=44989681061&__snid3__=60132779994
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. 読んだ量や吸収する力は、必要かもしれませんが、松本 清張の場合、
古本屋での立読みこそが、質量ともに、あの迫力を生みだしたのです。
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. 松本 清張 作家 19091221 福岡 東京 19920804 82 /清張紙碑
http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=20020804
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…… 往時“小説の神様”である志賀 直哉の文章作法が理想とされて
いた。だが神様でさえも無頓着に同じ言葉を繰り返している部分がある。
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波多野 完治《文章心理学入門 1941 三省堂 1953-20030606 新潮社》
http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=19041201
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. 志賀 直哉 作家 18830220 宮城 東京 19711021 88 /東大英文科中退
http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=19041106
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…… 山口 瞳《男性自身 1963-1995 週刊新潮》によると、編集者時代
には原稿の字数計算が苦手だったそうです。そこで彼は、実際に印刷さ
れる字詰めの原稿用紙をガリ版で印刷して、もとの原稿(二十字詰め)
を書き写してから、全体のレイアウトを決定した。
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10月17日(火)
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