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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 中秋の名月 〜 The harvest moon is the full moon 〜
…… 481社の創業にたずさわった
という渋沢 栄一(渋沢栄一記念館提供)© AERA dot. 提供
  
《青天を衝け 20210214 NHK大河》の主人公で「日本資本主義の父」と
称される渋沢 栄一。渋沢家五代目の渋沢 健氏が衝撃を受けたご先祖様
の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。
 
 渋沢栄一は91年の人生を全うし、最後まで老骨に鞭を打っていた姿が
伝記資料に鮮明に表れています。
 
 亡くなった1931年の年譜には、国家同士の対立が高まっているところ、
複数の米国の識者との親善交流の記録が掲載されています。市民一人一
人のお互いへのリスペクトが二国間の関係構築で大事であると栄一は考
えていたのでしょう。
 
 また同年の9月6日には中華民国水災同情会会長として「中華民国の水
害に就て」と題する講演を飛鳥山邸の病床から放送しています。募集し
た義金は9月17日に上海まで届きましたが、満州事変が18日に起こり、
中華民国政府が受取りを拒絶したようです。
 
 栄一が永眠したのは2か月後の11月11日でした。
 
 前年の1930年11月8日には救護法実施促進委員会の主要メンバーが栄
一の力添えの要望に訪ねてくる記録が残っています。社会における困窮
者の公的救済を国と地方自治体に義務付ける「救護法」は1929年に制定
されたのに関わらず、政権交代で政府が財政緊縮に転じ、棚上げ状態に
なっていたのです。
 
 訪問者たちが訪れたときに栄一は風邪で寝込んでいましたが、栄一は
面会に応じ、「老いぼれの身でお役に立つわかりませんが」と大蔵大臣
と内務大臣に面会申込の電話をして、外出する支度をしました。
 
 熱ある老人が冷たい風が吹く11月に外出することに家族や主治医は反
対しましたが、「この老いぼれが平素養生しているのは、こういうとき
の役に立ちたいからだ。これで私が死んだとしても、20万人もの不幸な
人たちが救われるのならば本望だ」と出かけました。救護法は栄一が亡
くなってからおよそ2か月後の1932年1月1日から実施されます。
 
 栄一は『論語と算盤』の「精神老衰の予防法」でこのような考えを示
しています。
「自分は文明の老人たることを希望する。」
 
「しかして文明の老人たるには、身体はたとい衰弱するとしても、精神
が衰弱せぬようにしたい。」
 
「私は単に肉塊の存在たるは人として甚だ嫌うので、身体の世にある限
りは、どうぞ精神をも存在せしめたいと思うのである。」
 
 人生最後、肉魂の存在が尽きるまで栄一の精神は健在で、そういう意
味では、現在も存在感があります。
 
 ただ、世の中には、身体は健常なのに精神が不本意に著しく衰える方
々の存在が少なくありません。WHO(世界保健機関)の試算によると、
世界全体の認知症患者の数は2019年の時点で5520万人を上回ったようで、
2050年までに2・5倍の1億3900万人以上になると推計しています。30年
後の日本人の数をはるかに上回る桁違いの人数です。
 
 一方、現在の日本では2020年の時点で65歳以上の高齢者の認知症有病
率は16.7%、約602万人と推計されています。単純比較では世界の1割以
上の認知症有病者な日本人ということになります。
 
 また、OECD(経済協力開発機構)によると日本の認知症有病率は2.33
%であり、OECD加盟国(平均1.48%)のうちで最多であるそうです。日
本は認知症大国なのです。
 
 日本に高齢者が多いことだけが原因ではなさそうです。認知症とは単
なる加齢による物忘れとは異なり、「おじいちゃん、最近ボケたよね〜」
ではないのです。認知症とは疾患です。
 
 加齢によって物忘れは普通ですが、ほとんどの場合は部分的です。そ
して、忘れ物を自分で探そうとします。一方、認知症有病者の場合は完
全に物忘れしています。そして、誰かが盗んだ等、他人のせいにする傾
向があるようです。
 
 この認知症の6割以上を占めると云われるアルツハイマー病は脳の神

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09月21日(火)
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