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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 悪友四重奏
 一月二十日は土曜日だったが、これがもし月曜日ならどうなるのか。
あるいはゴールデン・ウィークのように休日が断続する場合はどうか、
など疑問点はいくらでもあるが、いまさら知っても何の役にも立たない
ので、質問しない。
 この世代の主要なテーマは、年金と保険と病気が三点セットである。
 与太郎は、かねて用意しておいたジョークをもちだす。
「きみは、タイヤ・メーカーを立派に勤めあげ、めでたく退職したんだ。
おめでとう、これでほんとの“リ・タイヤ”」(笑)
ことのほか(予想以上に)ウケたので、念のため確認する。
「このジョーク、東洋ゴムでは(創業以来)誰も言わなんだか?」
「うん、聞いたことないな」
「なんというクソマジメな会社に、きみは生涯をささげたのか! もう
いっぺん職場にもどって、みんなに教えてやれ」
 馬場君は、このジョークがいたく気に入ったとみえて、一時間あまり
おくれて駆けつけた竹内君に、早速ためしてみる。
「ぼくは、タイヤ会社を退職してな。これがほんまの“リタイヤ”や」
「あ、そう。なるほどね」
 竹内君は(食べるほうに熱心で)さっぱり乗ってこない。かわりに、
吉田君と与太郎が、顔を見合わせて吹きだした。
「空っ腹の相手には、このジョークは通じないらしいぜ」
 うまくやれば、終生ウケるにちがいない。与太郎は、このダジャレの
永久使用権を馬場君にプレゼントすることにした。ただし知的所有権は、
死後五十年まで、誰にもゆずらない。
 
 吉田君と竹内君が名刺を交換したので、つられて馬場君も差しだす。
「これ、最後の名刺の残りやけど」
「前とか元のハンコ捺せば、まだまだ使えるぞ」
 この四人は、シンフォニエッタ・デビュー時の創成メンバーであり、
与太郎の結婚式での同席以来、三十四年八ヶ月ぶりとなる。
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tire    タイヤ(英=tyre)
tired    飽きる。
…… ローマ人は、ローマ文明に飽きたのだ。
 Kerenyi,Karl 神話学 18970119 Hungaly 19730414 76 /宗教史
 
retire from 引退する。定年退職=the retirement age
re-tail  (話など)受け売りする。
BankHoliday 公休日(英)→バンバ・ホリデー(?)
 
 吉田肇&馬場久雄両君の名刺(略)→ 竹内君の名刺は前掲 20010105
/20020714 東京転勤
 
 
 
 草莽記 〜 銅像は残った 〜
 
 四人そろったところで、本宮先生に会えなかった事情を説明する。
(前日の電話で、東京の親戚にご不幸があったそうである)
 ついで、金谷先生に桃を送ったら、アマチュア・カメラマンでもある
先生が、自転車をこいで、与太郎の生れ育った家の現状、小学校の正門、
三条京阪の向いにあった店舗の跡地周辺などを撮影して、組写真にして
送ってくださったことを自慢する。
「諸君、ボクはすぐにお礼の手紙も書けないでいるんだ。ふるさとの山
に向いて云ふことなし、仰げば尊し我が師の恩……」
 みんなが、シュンとしたところで、つい演説をはじめてしまった。
 
阿波 父の店が在ったあたりは、ボクが中学に入ったころから、いずれ
京阪電鉄に買収され、立ちのきを迫られるという風評があった。いまで
いう地上げだ。そして二十数年のちに、その周辺一帯の生活者は、なに
がしかの金と引きかえに出ていった。商店ばかりではない、寺まで墓場
ごと消えたのだ。そもそも三条大橋といえば、東海道五十三次の終点だ。
竹内 双六でいえば、あがりだよね。
阿波 すくなくとも、東京遷都までは、日本のメッカだったのだ。
(諸国の要人を歴訪した高山彦九郎も、この三条大橋にたどり着くや、
旅のちりを払い、御所の方角に向って遥拝したのである)
 ところが、先生の写真をみると、そのあたりは、ゴースト・エリアに
なり果てている。それとなく商店らしいものはあるとしても、この場所
になくてはならぬものではない。ここに江戸時代の景観を再現するなら

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09月20日(木)
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