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与太郎文庫
by 与太郎
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■ くたばれ!たかじん(2)
    ちゃんの一人が居残って、ほかのカワイコちゃんを追い出す。
    したがって店が老舗になるころには客は来ない。コーヒーだけ
    が旨くなる。♪「店がふ〜る、お客は来ない」
ざこば ベッピンのねえちゃんが居らな客は来ん。ワシかて行かん。
 阿波 そやから、当時ベッピン集めたがな。八十件の問い合わせで、
    四十人に面接した。そして五人を選んだ。女子大生、OLから
    人妻まで、えりすぐりの美女五人やで。カンタンや、時間給を
    二割増しで広告だしたらこの結果や。
ざこば ワーッと来たか?
 阿波 ワーッと来た。カワイコちゃんがワーッと来た、客は来ない。
ざこば ナンデカ?
 阿波 さいな、そこや。ボクもつい最近までナンデカわからなんだ。
    タカじんの本を立ち読みして、突如はじめて原因がわかった!
ざこば アノ本でも参考になるか。
 阿波 店内に美女五人、バリバリのピチピチや。客は表からのぞいて
    入りとうてしゃぁない。通りすがりの若者なら、匂いだけでも
    寄ってくる。ドアの前に立つ、そこでギョッとする。メガネに
    エプロンにギター抱えた薄汚い男が、こっち向いてにらんどる
    やないか。もう一人の男は腕組みして天井にらんどる。これで
    入ってくる青年は、将来有望な大物にちがいない。若き日の、
    有望なる落語家・桂朝丸でも、スゴスゴ帰るのが当然や。
ざこば タカじん、アイツなりに張り切っとったんやで。
 阿波 夜の店ならゴマカシも利く、客も素面やないからな。こっちは
    まじめな青年ロードーシャ諸君の店や。工場づとめの昼休みに
    怪しげな二人組の用心棒のいる店で、問題おこしたらクビや。
    二十数年間、ボクはこのことに思いいたらなんだ。
ざこば アノ本では、アンタが楽器鳴らすさかい、客が来んみたいや。
 阿波 バカモン! タカじんのこっちゃ。ボクは、たしかにチェロと
    いう高級な楽器を弾くことができる。しかし自分の店で営業中
    に弾くなんぞ、あり得ない。これは“野暮”や“気障”を通り
    越した“不粋”であって、死んだほうがマシだ。たとえば先の
    ギャラ問題なら、彼を頼んだ上で払えない場合には、ボクなら
    平気で踏みたおす。それを彼はこう描写している。店の裏手に
    呼んで「悪いねえ給料払えなくて(略)勘弁してよ」などと、
    バカモン!タカじんのこっちゃ。俺は生涯を通じて、女言葉で
    しゃべった記憶もない。俺の店には、上手と下手があったが、
    裏手も裏口もない。俺の“男の美学”によれば、他人の借金を
    とがめるヤツは風上に置かない。ありもしない話をするヤツは
    黙殺する。しかしながら、タカじんのウソッパチは許せない。
    善意にもとずいた誤解、すなわちボクはタカじんが善意のもと
    にボクのことを書き記したと信じて疑わない。善意のバカモン
    ほど始末におえんのだ、まったく。ブン殴ってやりたい。
ざこば タカじんに、どうせぇいうんや。
 阿波 ヤツが真実に目覚め、涙を流しながら心の中で謝罪すべきだ。
    ボクに謝ることはない。つぎのように、ひとりで歌ってみろ。
      ♪ not in a shy-way, Oh No, Oh No not me, I did it my way.
ざこば 英語の歌やな、なんのこっちゃわからんけど。
 阿波 シナトラの絶唱《マイ・ウェイ》の一節だ。この歌もそうだ、
    人前で歌えば“不粋”きわまりない名曲なのだ。シナトラ以外
    の男が、これを人前で歌うことは法律で禁じるべきだ。
ざこば タカじんも歌うとったような気がするで。
 阿波 バカモン! タカじんのこっちゃ。ボクは、たしかにチェロで
    《イェスタディ》も弾いたことがある。それはタカじんの店で
    タカじんを引き立てるため、彼のために伴奏したことがある。
    客の居らん自分の喫茶店で、毎日午後三時にあらわれて弾く?

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06月07日(金)
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