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与太郎文庫
by 与太郎
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■ ふるさと日本のイントロダクション
──ひとくちに文化事業といいましても大原美術館などは 倉敷そのも
のを価値づける偉業で 文化とは何かを示した例といえるでしょうね
本郷 この場合も 大原孫三郎ひとりの仕事ではなく児島虎次郎という
すぐれた友人を得た成果です 氏は画家としての業績もあるのに専門家
はともかく一般の人たちにとっては やや美術館のかげにかくれていま
したね そこて47年にその作品集をあつめて 児島虎次郎館を建てまし
た 大原コレクションに対して こちらは個人の美術館ですね そうす
るとこんどは“西洋絵画の動向と展開”というテーマが泌要になって 
複製ながらひととおり観賞できるようにしたのが アイビー学館です 
いうなれば 点と線が 一定の秩序でひろがっていきます もうひとつ
の例をあげますと倉敷代官所を原型のまま休憩所にして使っています襲
撃事件のあった建物なんですが これなど幕末のエピソードといえまし
ょうね倉敷記念館は 文字どおり近代日本産業の生いたちを如実に示す
もので 併せて郷土資杵や吉備文明の歴史(アイビー学館)などたどっ
ていただくと なかなか雄大な展望の糸口になるかもしれません 
──なにげなく訪れた人が ふと興味を抱くということになれは理想的
ですね 
本郷 戦後の急速な経済復興から 高度成長期を経て ようやく落ちつ
いて考えるべき時がきたといえます もう一度 文化について見なおそ
う という気運も出てきた 経済界では週休二日制の実現が この状況
をよくあらわしています 二日間の休日をどうするか 私の考えでは
“休養と教養”にあてるべきですね 肉体的再生産と精神的再生産とい
ってもいいでしょう とくに後者は これまで軽視されていましたね 
実生活に関するかぎり 単なる“ムダ”にすぎなかったところが最近で
は“必要なムダ”であることも理解されるようになった 学校がその場
であるなら 私どもの広場はよりリラックスした空間として活用された
い教科書に対する副読本のような役わりを果したいと思いますね
──さきほどの未完成な面は 同時に 社長が抱いておられる夢でもあ
ると思われます ぜひ聞かせてください
本郷 いろいろありましてね たとえば私の家の庭で見つけたミドリガ
メをここへ連れてくると ちゃんと適応していることから思いついたの
ですか ホタルを飛ばせてみたい それも業者が孵化したのを輸送して
きて放すのではなく 広場の池で 卵から幼虫になるのを見ながら育て
あげるわけです やがて飛んでいってしまって帰ってこないかもしれな
いがこれはやむを得ない 夏の夜に地元の人がホタルを見つけて“アイ
ビー広場からやってきたんだ”といってくだされば それで満足て-す
──精神的ぜいたくと申しますか(笑)
本郷 広場の中央は四方が壁で 夜空が一幅の絵のように感じられます
 この画面にあらわれる星のかずかずを何らかの方法でとらえてみたい
のです たとえばプラネタリウムは宇宙の模倣てすけれどここには自然
そのものの星空が借景としてあるわけですからね 何かいい工夫はあり
ませんかと倉敷天文台の 本田実先生にお願いしているんですがね(28
頁参照)
──ぜひ実現していただきたい夢です 
本郷 実現できそうなものでは 駐車場の周囲に 苗木や近くの山から
移してきた木のコレクションです 各県各都市の県木・市木あるいは花
などをできるだけ集めて 訪れる人の“ふるさとの林”をつくりたい 
諺に“一年の計をたてるなら穀物を 十年の計には樹を植えよ”といい
ますからね ただし“百年の計は人”と続くわけで この方は たいへ
んてす
──倉敷紡績としては まもなく九十年ですから 達成目前といえます
ね 
本郷 クラボウ・マンにとって 企業は生涯教育の場ですからね
 
(19770912/倉敷アイビースクエアにて)
 
【次号は俳優・近藤 正臣さん むかしもいまも芝居が好き】
 
── 《ふるさと日本のイントロダクション 19781002 月刊山陽》
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19781002
 

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09月12日(月)
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