ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
[1052286hit]

■ 退屈論
♀Yekaterina II      17290502 Duitch Russia 17961117 67 /
(エカチェリーナ 2“女帝” 17290421 Julius Russia 17961106 67)
/籍=ゾフィー・フリデリーケ・アウグスタ

 
…… 桝君(キャセイ航空・田村 忠彦君の同僚)の文章は、与太郎の
結婚後に編集する予定の小冊子《宴のあと》の趣旨を、みごとに誤解し
ていた。末尾に「この地で彼は生れ育ち、私と知り合った」とつけ加え
てみたが、やはりそぐわない。
 ロシア人の父と日本人の母をもつ、白皙の混血青年は、プラウダ紙の
愛読者として国際政治に通じており、ウィットに富む会話の達人である。
 決して退屈な男ではないが、このような場ちがいにおいては、やはり
とりかえしがつかない、という実例であろう。
── 《虚々日々 20001224 阿波文庫》P124(追記)
 
 姉・三・六角                  桝 優
 
…… 京都は8世紀末以来1000年の王城の地、つまりわが国の首都であ
った。京都風とか、京好み、洛趣などということばがある。これらのこ
とばには、みやびた、ゆかしい、おちついた、などのニュアンスが込め
られている。このことは日本人なら誰しも感じているであろう。源氏物
語、竹取物語、和泉式部日記などの一連の王朝文学の舞台が、栄華物語、
大鏡などの歴史ものにあらわれる政治の葛藤が、われわれの京都で行わ
れたという事実が、京都をして日本人の心のふるさとと呼ばしめるので
ある。
 のどかにも平和な日々をおくった平安朝の貴族たち、その陰で下積み
の生活をおくった庶民の声が、いまも文学に歴史にまざまざと残ってい
る。一般に京都の観光はこの伝統と文化を背景にした古社寺、史跡めぐ
りにはじまるが、遠く脚を運ばずとも、丸・竹・夷・二・押・御池・姉
・三・六角・蛸・錦・四・綾・仏・高・松・万・五条の《町名づくし》
で呼ばれる街の中にも祖先の喜怒哀楽の歴史は懐かしくころがっている。
観光の対象を画一的にしばることなく、この雰囲気を味わうだけで充分
であろう。又さらに、それらを彩るのが沈潜した奥行きを感じさせる京
都盆地の風景であり、格子戸やのれんをかけた町家の続く独特の家並で
あり、やさしい京言葉なのだ。京ことばは一体につまる音やはあねる音
が少なく、長く引く音が多い。したがって、せかせかした感じがなく、
おだやかで円味を帯びて悠長である。又京都の食べ物は概して質素で都
市周辺から出る野菜を材料とする漬物の味覚は格別である。
 京都の夏はかなり暑く、冬は底冷えで殊の外寒いところであるが、仕
事から開放されて4年の古都の景勝、遺跡、太古、王朝以来幾世代の変
遷を偲び、大いなる遺産について知り得たら幸である。もう春も間近か
である。げに夏冬を諦観し、春秋と天の時を楽しみたい。
 

01月20日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る