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Kenの日記
by Ken
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■「白バラは散らず」
学生時代に読んだ本「白バラは散らず」を読み返しました。6月初旬に田舎に帰省した時に持って帰りました。この本はドイツのヒトラー独裁政権下のドイツ社会において、時の政権に対して抵抗運動を展開し死刑となった大学生と大学教授の勇敢な行動を扱っています。
国家社会主義統制で社会が歪み自由が奪われ長引く戦争では戦死者が増加し、ユダヤ人や健康なドイツ人以外の人々への迫害がエスカレートしていくのですが、ミュンヘン大学の学生・教師の6人がこの社会の流れに抵抗しました。彼等の活動は巧みに配られる「白バラ通信」という政権批判文書の頒布・政権批判落書き等を通してドイツの人々にナチス政権への反抗を呼びかけるものでした。
彼等はナチスの捜査機関に分からないように巧みに地下に潜伏して活動を進めました。しかし大学でビラを撒いている所を発見されてしまいます。結局6人の活動実態がナチスに知られるところとなり6人とも死刑となってしまいました。その6人はハンス・ショル(医学生)、アレクサンダー・シュモレル(医学生)クリストフ・プロープスト(医学生)ヴィリー・グラーフ(医学生)ゾフィー・ショル(生物・哲学)、クルト・フーバー(哲学教授)でした。ハンス・ショルとゾフィー・ショルは兄妹です。
この本を再び読みたくなったのは今年が終戦70周年にあたることと同時に、現在国会において議論されている「安全保障関連法案」が非情に危険な一歩踏み出すことに繋がりかねないと思えるからです。ドイツのヒトラーの台頭・日本の軍国主義政権の勃興には両国の一般国民は大多数が賛成しました。それが積極的賛成であったか「渋々」の賛成であったかは別にして、ドイツ・日本とも破滅に向かって進み始め、国民はそれをどこかで予感しつつも国家と運命を共にするしかない状況に追い込まれていきました。その時にどのような「人達」が勇気を持って反抗できたか確認しておきたかったのです。
反戦ビラの「白バラ通信」の作成はハンスとゾフィーのショル家の兄妹2人が中心となって行なわれました。ショル家は父ローベルト・母マクダネーレと5人兄弟の家庭でした。ハンスは2番目、ゾフィーは4番目の子供です。「白バラは散らず」は一番上の姉のインゲが書き残したものです。この本では「ショル家」の非常に深い家族愛と家族全員が真摯なクリスチャンであることが紹介されています。そしてそこから生ずる正義・公正に対する深い共感と、「他人に対する愛情→自己犠牲を選択できる勇気」が家庭内に溢れていたことが分かります。
法定でショルとゾフィーの死刑判決を聞く両親二人の心情がどれほど深く悲しいものであったか想像を超えます。また留置所関係者の証言からショル・ゾフィーが死刑判決を受けてからも非常に立派な態度で通し、刑務所関係者を驚かせたことが語られています。彼等が受け入れた「自己犠牲の死」はどんなに誇らしく、達成感をもたらすものであったのかこれも想像を超えます。
現代ドイツでは「白バラ通信」の存在は嘗ての自分達民族の中に良心を持って立派に行動した先輩がいたことを証明する非常に貴重な資料となっています。残念ながら日本においては、この「白バラ通信」に比肩しうる市民活動があったという証拠は残っていません。
この本を読んで大切だと思ったのは「信仰の重要性」そしてその信仰は「家族」単位に育まれるということです。理論や知識だけでは「死という最終的自己犠牲」を払う抵抗活動が可能となるとは思えないのです。社会と家族の関わり合いにおいて「信仰(キリスト教)」の存在は非常に大切なもののように思われます。現代日本の状況は理論・知識は立派だと思うのですが、昭和初期の状況のように社会が混乱してしまうとやはり当時と同じ軍国主義の道を歩み出しそうな気がします。残念ながらそれを防ぎ得る仕組みができているとは思えません。
06月14日(日)
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