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日刊・知的ぐうたら生活
by schazzie
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■ジャズフェス詳細決定
「悲しみはもう動きだしている。悲しみは早起きで、べたつく両腕を私の首に巻きつけ、熱くて臭い息を私の耳に吹きかけながら待っている」。ソフィー・スタントンは、未亡人になるにはあまりに若すぎると感じている。結婚後わずか3年で、最愛の夫イーサンを癌で亡くしてしまったのだ。彼女の苦しみも知らずに世界は回り続ける。彼女にとって唯一賢明と思える行動は、家に閉じこもり、真夜中に人目を忍んでコンビニへ行き、そこで買えるものだけで生活することだった。何もかもがつらい。イーサンにかかってくる勧誘の電話、イーサン宛の手紙、いまもイーサンの匂いがするシャツ。初めのうちは優しく憂いに沈んだ「良い」未亡人のソフィーだが、ある日ガレージの扉を車で突き破ってしまい、それから何かプツンと切れる。バスローブ姿で職場に現れたり、店のディスプレイの下に隠れたり…。上司に休みを取るよう勧められた彼女は、家を売却し、親友ルースと暮らしながら再出発するためにオレゴン州アッシュランドに移り住む。悲しみも彼女についてくる。しかし、ボランティア仲介所から放火癖のある10代の問題児の世話を任されたり、魅力的な男優につきまとわれたり、地元のレストランでデザート作りの仕事を始めたことで、ソフィーはこれまで自分に取り付いて離れなかった苦悩について深く考えざるを得なくなる。喪失を悲しくも見事に描いた作品。著者ウィンストンが前編にわたってヒロインと物語に染み込ませた優美さ、ほろ苦いユーモア、鮮烈な迫真性は、読む者の心をがっちりとつかんで放さない。ソフィーはひどく傷ついてはいるが、ひょうきんで、新鮮で、じつに説得力がある。一瞬たりとも陳腐なところがない、ウィンストンのすばらしいデビュー作。
10月13日(金)
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