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日刊・知的ぐうたら生活
by schazzie
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■キング&ストラウブ本
あの顔が現れ、あの声が聞こえてくると、いつも自分に言い聞かせてきた嘘が彼にはあった。昔あるところに、母親の神経症的な恐怖感がカゼのように伝染する少年がいた。少年は壮大なファンタジーをつくりあげた。それは、やさしい母親と、母親を救出するジャック・ソーヤーの物語だった。物語は完全なフィクションで、16歳になるまで彼はそのことをすっかり忘れていた。それまでは落ち着いた生活を送っていた。そして今、ようやく落ち着いた矢先に、彼は、草原を北に向かって気が狂ったように駆け抜けることになる。あとにまがまがしい足跡と、驚いたガの群れを残して。だが、ことを進めるにあたって取り乱すことはない。
今回ジャックはとつぜん事件に巻き込まれ、「テリトリー」に戻ることになる。フィッシャーマン本人が、切断された子どもの足がついた靴の片方を、ジャックに送りつけてきたのだ。20年間忘れていた友人のスピーディー・パーカーや、その他大勢の変わり者(盲目のDJ、行方不明の子どもの美しい母親、ヘーゲルを信奉しているという暴走族の一員など)に助けられながら、ジャックは、フレンチランディングと「テリトリー」を行き来し、フィッシャーマンと、悪の大御所「アバラ」を追う。クリムゾンの王アバラは、世界の軸の破壊をもくろむ。
『The Talisman』が、1980年代らしさをストレートに描いた神話であったのに対して、『Black House』は、前作以上に豊かで複雑なストーリーになっている。ファンタジーでありながら、チャールズ・ディケンズやエドガー・アラン・ポー、ジャズ、野球、そしてキング自身の「暗黒の塔」伝説を巧妙に絡ませた、ホラー仕立てのミステリーといったところである。『The Talisman』のファンは、頼もしいジャックがいまだ健在であることを実感することになるだろう。同様に、キングとストラウブの執筆スタイルも健在である。むしろ、この20年の間にますます成長している感がある。
(買ったのは、この版ではないのだが、データがこれしかみつからなかった。
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11月13日(水)
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