ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■優しいお姉さんは好きですか。
「ねえー。パパ、トランプやろうよー」

息子・タク(6才)にせっつかれ、娘・R(8才)も加わり3人でトランプ。

「パパ、しゃっぽーしゃっぽーしてー」

「はいはい」

Rとタクはシャッフルすることを「しゃっぽーしゃっぽー」と言う。なんかカワイイ。まずは七並べをやってみる。するとタクが早々に行き詰まり、パスを連続しビリになった。タクは人一倍負けず嫌いなので半ベソになり

「もうやんないっ!」

ぷいっと拗ねてしまった。

「うおおい!自分から誘ってきたくせにいきなりやめんなよ!」

「やだ!やんない!」

「次はたっくんの好きな遊びやっていいよ」

「じゃあ、しんけいすいじゃく!」

6才児は単純である。パアッと明るい顔になって

「パパ早く並べて!」

僕を思いっきり顎で使う。で、並べ終わってゲームスタート。Rとタクがしのぎを削ってカードを取り捲っていたが(僕は2秒で忘れるためダメである)、最終的にはタクが勝った。

「いえーい、いえーい」

すっかり機嫌が治ったタクであったが、Rが僕にそっと耳打ちした。

「あのね、Rね、分かってたんだけどたっくんのためにわざと間違えてあげたの」

うおお、なんということだ。

「R、お前はいい子だなあ…」

弟には優しくせよ、なんてひとことも言ってないのに、なんて優しく育ったのだろう。その後ババ抜きだのジジ抜きだのスピードだのひととおりやったが、タクがそこそこ勝ち、Rもそこそこ勝ち、僕がボロ負けで終わったのでタクは上機嫌であった。

夜になってお風呂でまたお遊び。ジャンケンなのだが普通のジャンケンではなく、手を後ろに隠したままグーチョキパーのいずれかを出しておいて、それが何か相手に当てさせるというルールであった。

Rが後ろに隠した手はグーかチョキかパーか。その答えをタクが言う前に、僕が後ろを覗き込んでRの手を確認する。答えを言った後に変えさせないためである。Rが出しているのはチョキだった。

「じゃーたっくん、答えをどうぞ!」

「グー!」

タクは自信満々にグーだと答えた。しかし僕は正解を知っている。残念でした…と思いきや、Rがにやーっとしながら出したのは

「グーでしたー!」

「やったー!当たりだー!」

タクは正解だ、と喜ぶ。

「Rは優しいな」

「うん」

Rもニコニコと喜びながら

「たっくん、パパが『Rは優しいね』って言った意味、分かる?」

ちょっと意地悪っぽい笑みを浮かべてタクに聞いていたが

「わかんね」

姉の優しさに気付かないとはなんという贅沢なヤツ。いいなあ。僕もこんな優しいお姉ちゃん欲しかったよ…。

子供の頃、姉がいる友達を捕まえて

「ねえ、ちゃんと風呂に入ってる?」

と聞いてみて、「うん」と答えたらすさかず

「姉ちゃんと風呂に入ってるんだってー!うっわ。ドエロ!」

鬼の首を捕ったようにからかったもんだが…。

あの時の田川君。ごめんなさい。本当はお姉ちゃんが欲しかったのです。

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12月13日(火)
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