ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■愛が泊まらない
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正月休みが終わるので栃木の実家から東京に帰る。

但し娘・R(7才)だけはもう2泊することになっていた。これは

「もうちょっといてくれよー」

と言うさびしんぼうのの母と

「もうひとりでお泊まり出来るもん!」

と自立心が芽生え始めたお年頃のRのためである。僕としてはRと離れるのが寂しい。覚悟はしていたが、親は子離れ出来てないのに子供はあっさり親離れしていくんだなあ。

「パパ寂しいから泊まらないで欲しいな〜」

などという、成長する子供の足を引っ張るようなことは口が裂けても言えないので

「Rちゃんはパパがいなくて寂しくないかい?」

と遠回しに聞いてみたら

「さびしくないよ」

なんだ。この。失恋した時よりも重い悲しみは。Rは前にも1度ひとりでお泊まりしたことがあるので心配はないだろう。問題は息子・タク(5才)である。

タクもRを真似して「ボクも泊まる!」と意気込んでいるのである。しかし実際泊まれるかどうかは

「多分無理」

僕と嫁はそう読んでいた。何しろまだママベッタリの甘えん坊。実際に僕らが帰る時に

「たっくん、じゃあね」

なんて別れる時になったら

「やっぱりお泊まりやめるー!」

と号泣するに決まっている。なので

「じゃあたっくんもRちゃんと一緒にお泊まりねー」

取り敢えず話だけ合わせておいた。案の定、夜になりお風呂に入っていると急にシクシク泣き出し

「やっぱり寂しいから泊まらない…」

と涙ながらに訴えていた。タクなりに1日中「泊まれるかどうか」考えていたんだろうなあ。きっと夜になり眠くなったのでテンションが下がりナーバスになっていると思われる。

「よしよし、パパとママと一緒に帰ろうな」

その晩はそうタクを慰めたが、一晩寝て起きた朝には

「やっぱり泊まる〜♪」

また調子こいて撤回宣言。

「そうかー。やっぱり泊まるかー」

と返事しながらも

「どうせ帰る直前になったらまた言うこと変わるよ」

と嫁とヒソヒソ話しながら帰り仕度を始めた。当然タクの荷物も詰め込む。で、栃木最後の日は公園で遊び、その後ファミレスで昼飯。もさもさと食べていたタクが

「…もうこれで帰っちゃうの?」

ポツリと呟いた。そらきたきたきた。

「そうだよー。もうお別れだよー」

ニヤニヤしながら答える僕と嫁。

「…やっぱりたっくんも帰る」

やっぱりな!

「そうかー。じゃあ一緒に電車乗ろう」

というわけでタクの親から離れてのお泊まりはまだまだ先のこととなった。駅まで母とRが見送ってくれたが

「Rちゃーん!Rちゃーん!」

電車に乗る直前でタクは感極まって号泣。やっぱりまだまだ甘えん坊である。

そして僕も泣きそうになってしまった。Rぅぅぅぅ…。

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01月05日(水)
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